2016年 出版動向 書籍はコンスタントにベストセラー 登場、雑誌低迷に歯止めかからず|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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2016年12月23日

2016年 出版動向
書籍はコンスタントにベストセラー 登場、雑誌低迷に歯止めかからず

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2016年の出版物販売実績は前年比約5%減となる見通しだが、書籍はコンスタントにベストセラーが登場し、児童、実用、学参など年間を通して好調だったジャンルが底上げし、約1%減と小幅な減少にとどまりそうだ。雑誌は約7%減と2年連続で大幅減となる。書籍と雑誌では明暗がはっきりと分かれ、雑誌は低落に歯止めがかからない。16年で注目すべきことは書籍が雑誌の販売金額を30年以上ぶりに上回ったこと。業界動向としては、大阪屋と栗田出版販売の経営統合、太洋社の破産申請など取次再編が進んだ。また実業之日本社、日本文芸社など他業界の企業の傘下に入る出版社もあり、業界構造は大きく変化しつつある。

書籍

文芸書では、石原慎太郎が政治家・田中角栄を一人称の小説形式で描いた『天才』(幻冬舎)が90万部のヒットに。特に上半期に売れ行きが集中した。4月に本屋大賞を受賞し、50万部を突破した宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)や同賞2位の住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社、67万部)は書店店頭での販売促進、テレビや新聞、SNSでのPRで売り伸ばした。第155回芥川賞は、村田沙耶香『コンビニ人間』(文藝春秋)が受賞。純文学作品ながら、7月の発売から1カ月で35万部に達し、10月にテレビのバラエティ番組で紹介されて再ブレイクし、52万部に到達。直木賞を受賞した荻原浩『海の見える理髪店』(集英社)は17万部に伸長。15年に一大旋風を巻き起こした又吉直樹『火花』(文藝春秋)をきっかけに、文芸書に注目する読者が少なからず増えたと言えるだろう。

東野圭吾は『危険なビーナス』(講談社)、『恋のゴンドラ』(実業之日本社)など16年も安定した売れ行き。サイト「小説家になろう」等での投稿作品を書籍化したWeb小説はKADOKAWAやアルファポリス、宝島社、ホビージャパンなど各社から刊行が相次ぎ、ひとつの市場を確立しつつある。アニメ化された「オーバーロード」(KADOKAWA)など人気シリーズも育っている。サンマーク出版が刊行した川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』は「泣ける」と評判を呼び、30万部に伸長。佐藤愛子『九十歳。何がめでたい』(小学館)や瀬戸内寂聴『老いも病も受け入れよう』(新潮社)など90代の超高齢女性作家のエッセイも幅広い層に受け入れられた。

自己啓発書・生き方本では、岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』がテレビでの度重なる紹介やダイヤモンド社が定期的にプロモーション施策を打ち出したことで、140万部に達し、息の長い売れ行きを示した。渡辺和子『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)も売れ続け、215万部に達した。

ビジネス書は全体的に不調で、ダイヤモンド社や文響社など一部の出版社に売れ筋が集中した。そのなかで安田正『超一流の雑談力』(文響社)、横山光昭『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)など具体例を中心としたハウツー本が人気を集めた。

前年に引き続き、絶好調だったのが児童書。絵本では15年にブームを呼んだ、のぶみ『ママがおばけになっちゃった!』(講談社、40万部)が続伸。またヨシタケシンスケ『このあとどうしちゃおう』(ブロンズ新社、17万部)など新進作家作品が短期間で大部数を記録した。赤ちゃん絵本ではロングセラーの松谷みよ子『いないいないばあ』(童心社)が11月に620万部を突破。かがくいひろし「だるまさん」シリーズ(ブロンズ新社)も3点で440万部に達するなど、非常に好調だ。新海誠『君の名は。』(角川つばさ文庫)などノベライズ作品にヒットが目立った児童文庫や図鑑、学習漫画なども堅調に推移。さらに11月には8年ぶりとなる「ハリー・ポッター」シリーズの新刊『ハリー・ポッターと呪いの子』が初版80万部で刊行され、発売3日で100万部に到達。ヒットトピックが相次ぎ、いま好調の波に乗っている。学習参考書は親の教育熱の高まり、学習指導要領の改訂など様々な要素が重なり、好調に推移している。各社が装丁をはじめ“やわらかい”作りへと刷新するケースが相次いでおり、特に基礎学習に特化した中学学参が目立った売れ行きだ。学研プラスの『ボカロで覚える中学歴史』『~中学理科』はボカロ楽曲で学ぶという異色すぎる企画が注目され、2点で35万5千部という類のない大ヒットとなった。児童書、学参など“こども”市場は手堅い。

14年以降、厳しい販売状況が続く文庫本は、16年も振るわなかった。既刊が売れず、新刊も定番ベストセラー作家のみに売れ行きが集中する傾向が続いた。そのなかで社会現象化したアニメ映画の原作本、新海誠『小説 君の名は。』(角川文庫)が130万部に達する大ヒットとなった。

実用書は、寝かしつけ絵本『おやすみ、ロジャー』(飛鳥新社)がテレビでの紹介等で火が付き、80万部に。Eiko『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』(サンマーク出版)は12月にミリオン達成。料理レシピ本大賞を受賞したnozomi『つくおき』(光文社、43万部)、ジョハンナ・バスフォード『ひみつの花園』(グラフィック社、28万部)を筆頭とした「ぬり絵」本などベストセラーが相次いだ。


雑誌

創刊企画は分冊百科やパズル誌、シニア層向けのニッチな趣味誌などが中心で、若者向け企画は皆無だ。注目を集める新雑誌が出ないことには活性化は難しい。16年も『小学二年生』、『AneCan』(いずれも小学館)や『SEDA』(日之出出版)、『Gainer』(光文社)など有名誌の休刊が目立った。また紙の雑誌を休刊し、『COURRiER JAPON』(講談社)などのように電子版に移行するケースも見られた。日本雑誌協会は次世代雑誌販売戦略会議の活動を本格化し、取次会社による雑誌の時限再販フェアの実施や年末12月31日に特別発売日を設定した。NTTドコモの「dマガジン」が大幅伸長し、楽天も8月に「楽天マガジン」を開始するなど定額制雑誌読み放題サービスは各方面で話題になった。さらにアマゾンジャパンが電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」を8月に開始したが、対象銘柄をめぐるトラブルが講談社等で起こり、業界内外に波紋を呼んだ。
以下のオンライン書店でご購入できます
2016年12月23日 新聞掲載(第3170号)
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