2016年書店 動向 世界で進む書店の変化 元気な独立系書店、高付加価値型へ|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2016年12月23日

2016年書店 動向
世界で進む書店の変化 元気な独立系書店、高付加価値型へ

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取次システムがきしむ中でこれまでの仕組みを変えようとする動きが出てきた。その代表が紀伊國屋書店による「買い切り・直仕入れ」である。

紀伊國屋書店は二〇一五年九月にスイッチ・パブリッシングが発売した村上春樹の『職業としての小説家』初版一〇万部のうち九万部を買い切ったのに続き、複数出版社との間で「買い切り・直仕入れ」を進め、二〇一六年は書籍一〇〇点ほどをこの取引方法で仕入れている。

同書店では個別のタイトルや取引条件を明らかにしていないが、「買い切り・直仕入れ」で仕入れた新星出版社の2016年度版の英検問題集「合格!問題集CD付」シリーズ(全6点)は、出版社側の発表によると書店マージンを四〇%以上に設定したという。ネット書店といった新たな競争相手の出現、そして取次システムの転換が背景にある。

一方、二〇一五年一一月に京都で誠光社という二〇坪の書店を開設した堀部篤史氏は、書籍中心の個人書店を開いた理由として「本」の変化を挙げた。ネットでの情報流通が広がる中で、「どうでも良い情報」は紙の本にする必要がなくなり、これからの本は「高価な嗜好品」になるというのだ。

確かにこの間、いろいろなところで試みられている新しい書店モデルの根底には、その考え方が共通しているように見える。

規模はまったく違うが、代官山から始まったカルチュア・コンビニエンス・クラブの蔦屋書店は、カフェやそのほかユニークなテナントがある贅沢な空間に、書籍を中心とした絞り込まれた商材を、担当者のセンスで物語を感じさせる並べ方で陳列する。

代官山蔦屋書店の翌年に東京の下北沢に開店した三〇坪ほどの「本屋B&B」も、新刊配本に頼らない絞り込んだ品揃えと、ビールなど飲料を提供し、毎晩開催するイベントなど、来店動機を多く持つ「目的地」としての「街の本屋」のモデルを提案する。

本、雑貨、カフェの複合店リーディングスタイルや、三省堂書店の「神保町いちのいち」、有隣堂の「STORY STORY」など、カフェや雑貨などとの複合店も、こうした新しい魅力を提供するための取り組みである。

そして、今年二月に文化通信社が実施したアメリカ視察で訪問したニューヨークとポートランド(オレゴン州)で、いずれも独立系書店の元気な姿が印象的だった。なかでもポートランドのパウエルズ・シティ・オブ・ブックスで、ある確信を得たような気がした。

街の中心地に二〇〇〇坪以上の本店を構え、ポートランドで知らない人はいないと言われる書店である。私は二〇〇三年以来、何度かこの書店を訪ねてきたが、今回は約一〇年ぶりの訪問だった。

実はここ数年、ネットなどで、パウエルズについて支店撤退やレイオフ(従業員の解雇)などネガティブな情報が伝わってきた。往時の勢いをなくしているのではないかと、正直、不安を抱きながらの訪問であったが、全くの杞憂だった。

そして、ポートランドのショッピングセンターにあった最大手チェーン書店バーンズ&ノーブルの店舗にはほとんど人がいなかった。

全米に展開するバーンズ&ノーブルはどの店舗も装飾や色使いが一緒。商品構成も基本的にフルラインナップだ。こうした画一性は、インターネット時代に魅力を失ったのではないか。

逆に独立系書店は、専門的な店主や従業員が商品を選別し、それぞれの店舗の得意分野を前面に出している。そういう店では客が気軽にスタッフと会話している。先に挙げた日本における新しい書店モデルの模索も、薄利多売型から高付加価値型への転換と言えるのではないだろうか。そういう書店の変化が世界的な規模で進行しているのである。

2016年12月23日 新聞掲載(第3170号)
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