第38回 サントリー学芸賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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受賞
2017年1月13日

第38回 サントリー学芸賞 贈呈式開催

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2016年12月12日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで第38回サントリー学芸賞の贈呈式が行われた。今回の受賞は〈政治・経済部門〉塩出浩之『越境者の政治史』(名古屋大学出版会)、白鳥潤一郎『「経済大国」日本の外交』(千倉書房)、〈芸術・文学部門〉池上裕子『越境と覇権』(三元社)、沖本幸子『乱舞の中世』(吉川弘文館)、金沢百枝『ロマネスク美術革命』(新潮社)、〈社会・風俗部門〉木村洋『文学熱の時代』(名古屋大学出版会)、〈思想・歴史部門〉熊谷英人『フランス革命という鏡』(白水社)、高山大毅『近世日本の「礼楽」と「修辞」』(東京大学出版会)となっている。受賞者は自身の研究に触れながら喜びの言葉を述べた。
前列左から木村、池上、サントリー財団・鳥井、沖本、金沢、後列左から塩出、白鳥、熊谷、高山の各氏

塩出氏「私が学問の道を志した時は、近代のナショナリズム、国民国家がどう生まれたのかに関心がありました。ある時からその対極にある移民という存在が謎に思われてきました。いま思うと、移民を考えることを通じて国家、政治、近代という時代はどういうものかを明らかにしたかったのかと思っています。名誉ある形で研究を認めていただけたのは幸せです」

白鳥氏「漠然とした気持ちで戦後の日本外交を学ぼうと大学院に進学したのは今から十年前です。今回いただいた楯はウイスキーの樽から作られたそうですが、私の本は例えばウイスキーが好きだという一念で十年弱の時間をかけて最初のひと樽ができた、という作品です。若書きの一冊が栄誉ある賞に値するものかは不安がありますが多くの方々の助けを借りて作り上げた経験が研究を進めていく上で確かな糧となると確信しています」

池上氏「受賞作の研究の調査で色々な場所に調査に行き、色々な方にお話を伺いました。ストックホルムの美術館で調査をしている中で発見がいくつかありました。その帰り道に今までの調査がすべて繋がってくるような、これまでに経験したことのない天啓のような感覚を受けました。その直感をアカデミックに論証していくのは困難な作業でしたが、賞をいただいて、それがただの思いこみでは無かったと言ってもらえたような気がしてうれしく思います」

沖本氏「私の研究は宴会芸の歴史が軸になっております。これでいただいて良いのかなという思いでいっぱいですが、サントリーはお酒の会社で、そちらでご縁をいただいたと思っています。ここまで人との出会いに恵まれてきました。大きな支えは編集者です。優れた編集者と出会い、仕事の中で引き上げられながらここまできました」

金沢氏「私の研究はロマネスク美術です。ロマネスクの聖堂は西ヨーロッパに数多く残っています。その聖堂に行く旅の仲間を得てまわって行けたことがこの本の土台になっています。まだまだ行かなければいけない聖堂はたくさんあります。まだこれから旅は続くので、そのエネルギーを充電させていただいた感じです」

木村氏「僕にとってサントリー学芸賞は丸谷才一と結びついています。丸谷才一はエッセイで〈賞の価値はそれを取った人の今後によって決まる〉と言っています。この言葉を忘れないようにしたいと思います」

熊谷氏「僕の専門は政治思想で、これは政治学と思想と歴史学が程よく混ざった分野です。とりわけ愛着を持っているのは歴史です。僕が心から敬愛する二人の歴史家、ヘロドトスとトゥキュディデスに共通しているのは人間への関心です。歴史学は人間への関心を持つ学問であるとともに、他人からの支え無しにはできない学問です。僕も色んな方にお世話になって賞をいただきました」

高山氏「十五年程、荻生徂徠を研究してきました。徂徠に示唆を受けた思想家や文学者は自分にとって先輩あるいは友人のような気がしてきます。故人を友にするのは友情としては一方通行です。しかし良い仕事をしていれば後代に自分のことを友だと思ってくれる人間が現れるということだと思います。今後はより一層精進を重ねて、百年後、二百年後に知己を得られるような仕事ができればいいなと思います」
2017年1月13日 新聞掲載(第3172号)
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