山田詠美さんは小説の「求道者」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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編集室から
2016年7月1日

山田詠美さんは小説の「求道者」

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山田詠美さんの話を拝聴していると、毎回感じることなのだが、この人は、まさに小説の「求道者」なのではないかということである。つねに言葉の高みを目指して、ひと言ひと言を紡ぎ出していく。そんな姿をいつも思い浮かべる。それはデビュー作『ベッドタイムアイズ』以来変わらない姿勢なのだろう。山田さんがデビューをした時のことは、未だに覚えている。鮮烈だった。「スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない。」という冒頭に、まず衝撃を受けた。そして、次につづく一文、あるいはそこから流れるようにして展開されていく文章に、何かここから新しい文学がはじまっていくような予感にとらわれた。その予感(と期待)は、三十年以上経った今から見ても、誤っていなかったと思う。

「自作のベストは?」と問われると、「Next One」と山田さんは必ず答えるという話を、以前うかがったと記憶している。作家としての矜持がそこでも垣間見られる。次回作は、いかなる作品になるのだろうか。「いい意味で期待を裏切る」ものとなるのだろうか。鶴首して待ちたい。 (A)
2016年7月1日 新聞掲載(第3146号)
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