経営コンサルタント・小宮一慶さん (上)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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あの人に会いたい
2017年1月20日

経営コンサルタント・小宮一慶さん (上)

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今から七年前のこと。同僚に勧められた一冊の本が、小宮さんとの出会いの始まりだった。
まずは経営の基本を学ぶ講座を受講し、そのあともこの人の話をもっと聞きたいと思った。年六回、(株)小宮コンサルタンツが東京と大阪で主宰する「経営実践セミナー」は最近、若い人も多数参加している。その人気の秘密は、いったいどこにあるのだろう。


オフィスでの小宮一慶さん
私は前職の主婦と生活社で、五〇歳の時に取締役に就任した。出版界には保守的なところがあり、この業界で女性の役員はまだ数少なく、手本にしたいモデルも存在しなかった。重責を担う職務に就いたものの、正直何をどうしていいかわからない不安を抱えながら日々仕事をしていた。

編集者としてはいくつか創刊誌を作り、少なからず会社に貢献したという自負はあったものの、経営は全くの門外漢。早朝の取締役会は言うに及ばず、周りをきょろきょろ見回しても何もわからぬまま、立ち尽くした時間は、結構長かったように思う。 

そんなときに当時の部下から一冊の本を勧められた。その著者が小宮一慶さんだった。「会社を経営するというのはどういうことなのか」という内容だったが、難しいことは一切なく、人としてあるべき姿が事例を豊富に引用しながら書かれた本だった。この本と出合わなかったら、小宮さんとの今の関わりはなかっただろう。 

以来、年六回行われる「経営実践セミナー」に参加しているが、ここでは小宮さんの一人舞台に参加者は引き込まれていく。 

そんな小宮さんが「話すことはある意味消えていくし無責任だと思う。でも書くことは逃げ場がなく自分で考え整理する。すごく孤独な作業だけど、とても大切な時間だと思う」と言う。

一三〇冊以上の著書を持つとは、どういうことなのだろう。出版に長く関わってきただけに、この事実は私にとってとても興味深いことだった。多くの人に本を通して「経営とは?」「人生の本質とは?」を伝えることが自分の役目だという小宮さんの言葉は、何度も聞いてきた。本から伝わることと、肉声で語られることの強さの違いを、私は徐々に感じるようになっていった。 

小宮さんのセミナーは、通常のスタイルだと午前中一時間半、午後は三時間強。途中休憩を挟むが全くの一人舞台で、パワーポイント等を映し出すスクリーンも使わず、シンプルでアナログなスタイルを徹底している。 

「いつも考えているし、いつも準備している。だから何の資料も必要がない」と小宮さん。それでも一人で五時間近く話し続けるためには、準備にかける時間と方法に何か秘密があるはずだ。それを探るべく、どんな子供だったのか、そこから話を伺うことにした。

    * 
2016年末で130冊を数える膨大な著書
 「大阪の堺市の出身でしたが、小宮という名前は何代も続いた江戸っ子。父は小学校の先生だったけど、母のほうは大阪の船場で代々商売をしていました。僕は大阪と東京の両方の血を受け継いでいるのかもしれない。総じて勉強はできたけど、高校の頃は英語以外、国語と数学はダメでした。それがね~、ある時突然完璧に理解できるようになった」「論理的な思考がぐんと上がった。ほとんど受験勉強をしなかったので現役では不合格だったけれど、次の年に京都大学法学部に入学しました」

なぜ法学部に? と聞くと、「一番難関だったから」と明快な答えが。 

「京都大学は予定調和を嫌う、そしてくみすることを良しとせずという校風なんです。それが僕にはとても合っていたのだと思う」。四年生の時に「大学に残らないか?」と教授に声をかけられたが、就職する道を選んだ小宮さん。なぜ銀行だったんですか? それもなぜ東京銀行に?  

職業の選択は、その人の人生においてかなりのウエイトを占めると思っている私は、この辺のところをきちんと聞いておきたかった。おそらく自分で決めることの狭さ、窮屈さより、導かれて遭遇する面白さにいつも食指が動く人なのだと思う。だからあまり考えずに、「東京銀行で働くと楽しそうだな」と直感で思ったと言う。

一年目は東京銀行名古屋支店に配属される。預金課に回されたが、カウンター業務でお客さんが一日三人しか来ないことも。「本当に自由でリベラルな行風で。四年勤めた後、アメリカに行ってこいと言われました」 

この後小宮さんはアメリカに渡り、ニューハンプシャーにあるダートマス大学で二年間過ごし、MBAを取得する。 

この時の経験が、今までの小宮さんの価値観を一八〇度変えてしまう。日本の「寄らば大樹の陰」とは全く真逆の考え方。それを何度も突き付けられて帰国する。東京銀行を退社し、刻々と変化する小宮さんの仕事は、どうなっていくのか、乞うご期待。
2017年1月20日 新聞掲載(第3173号)
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