田原総一朗の取材ノート「民間活動の自由は守られなければ」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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田原総一朗の取材ノート
2017年1月20日

民間活動の自由は守られなければ

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新しく大統領になるドナルド・トランプが、メキシコに新工場をつくろうとしていたフォード・モーターのCEOに直接圧力をかけて、強引に撤回させた。大統領になる権力者が、個別企業のトップに圧力をかけて計画を撤回させるとは、あってはならない由々しき事態である。

げんにアメリカの歴代大統領でこのようなことをした人物は一人もいない。

だが、トランプ氏は、こうしたことをやってはならないという認識が、まるでないようだ。

実はトヨタ自動車が、メキシコで新たな工場をつくるために二〇一五年に起工式をあげて、二〇一九年には自動車の生産をはじめることになっているのだが、トランプは、そのトヨタを次の標的にした。

「工場は米国内につくれ、メキシコにつくるならば高い関税を支払え」と、ツイッターで圧力をかけてきたのである。クライスラーにも同様の圧力をかけているようである。

「トランプ流」は、きわめて乱暴で、事実関係や歴史的経緯などをとび越えて、一方的に批判し、圧力をかけることだ。

実は、トヨタは米国内に一〇の製造拠点を持ち、過去三〇年間で二五〇〇万台以上の車を生産していて、約一三万六〇〇〇人の雇用を直接支えている。いってみれば、米国に少なからず貢献しているのである。

あるいは、トランプはこうしたことは知らないのかもしれない。だが、かりにトヨタのようには米国に貢献していない企業に対しても大統領が工場建設地について圧力をかけることは認められない行為である。

トヨタは、フォードのようにメキシコに新工場をつくることを諦らめはせず、トランプにもわかるように広報活動を展開しているが、気になるのは、日本政府の当事者、つまり経済活動にかかわりのある大臣たちの姿勢である。自由主義社会では、民間活動の自由は守られなければならず、トランプの圧力に対しては強く抗議すべきだが、この点がいずれも曖昧というか、はっきりいえば逃げているのではないか。
2017年1月20日 新聞掲載(第3173号)
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