未来を花束にして 原題「サフラジェット」 ヘレン・パンクハースト氏 来日インタビュー|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 特集
2017年1月20日

未来を花束にして 原題「サフラジェット」
ヘレン・パンクハースト氏 来日インタビュー

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映画『未来を花束にして』公開に先立ち劇中の主要人物、エメリン・パンクハーストの曾孫ヘレン・パンクハースト氏が来日。『イギリス女性参政権運動とプロパガンダ』著者で麗澤大学准教授の佐藤繭香氏が映画の内容に絡めながら女性参政権運動についてのインタビューを行なった。


イギリス女性参政権運動を題材にした映画『未来を花束にして』が今月27日に公開される。20世紀初めのイギリス女性参政権運動は、一部の活動家が行なった窓ガラスの破壊や郵便物の放火などの戦闘的行為(ミリタンシー)で知られている。映画の原題「サフラジェット」は、当時、「デイリー・メイル」紙によって、ミリタンシーを行なった女性社会政治同盟(WSPU)の活動家たちを指す言葉として使われ始めた。

映画の主人公は、洗濯工場で働くモード(キャリー・マリガン)だ。彼女は、町で目撃した商店の窓ガラスを破壊するサフラジェットたちの行為に衝撃を受け、また工場の同僚がその活動に参加していることを知る。同僚に巻き込まれる形で、WSPUの集会に参加し、エメリン・パンクハースト(メリル・ストリープ)の演説に魅了される。洗濯工場での過酷な労働や低賃金、上司からの性的嫌がらせなどに苦しむ彼女はよりよい生活を夢見て、変化を求め、次第に運動にのめり込んでいく。

今回、一九〇三年にWSPUを設立したエメリン・パンクハースト(一八五八―一九二八)の曾孫にあたるヘレン・パンクハースト氏が来日された。ヘレン氏は、女性や子どもの貧困解決を支援するNGO団体「ケア・インターナショナルUK」のキャンペーン・アンバサダーを務めるほか、家庭内暴力にさらされている女性を援助する「パンクハースト・センター」の設立者でもあり、曾祖母エメリンと同じく女性たちのために活動している。
――この映画では、著名な活動家ではなく、名もなき労働者階級女性が主人公であることをどう思われましたか?

「素晴らしいと思いました。本当に素晴らしい。製作者たちは、初めはアリスを主人公にしようとしていたのです。【アリスは、映画の中に登場する下院議員の妻でサフラジェットたちを支援している。】しかし、話し合っているうちに、モードにしました。祖母のシルヴィアは、絶対に賛成するでしょう。私も正しい選択だったと思っています。今や世の中はより民主的になり、多くの女性たちが働いています。だからこそ、モードの役は、私たち女性に語りかけてくれるのです」

ヘレン氏の祖母にあたるシルヴィア・パンクハーストは、エメリンの次女にあたるサフラジェットだが、労働者階級女性のために選挙権を得ようと活動したことで知られている。
――サフラジェットの始めたミリタンシーはよく批判されますが、どうお考えですか。

「多くのことを考えさせられます。まず第一に、ミリタンシーは、ショッキングなのです。しかし、男性の行動と考えるとそれほど驚かないのではと思います。つまり、そこには性の二重規範があり、私たちは、それに反応しているのです。第二になぜ彼女たちが戦闘的だったのかということと、政府がいかに暴力的だったのかということです。政府による暴力が女性を戦闘的にしたのです。彼女たちには声を上げるという民主的な闘い方は許されなかったのです。単に手を上げて、「政府は女性たちに選挙権を与えてくれますか?」と質問しただけで、彼女たちは、乱暴に会場の外に出され、ミリタンシーを経験したのです。【一九〇五年にエメリンの長女、クリスタベルが出席した自由党の政治集会での出来事。ここからミリタンシーが始まった。】ですから、私たちはミリタンシーの語り方に注意を払わなければなりません。もうひとつには、彼女たちは、実に多くのことを行ないました。これまでにない驚くべき活動手段ばかりです。それこそ、私たちが彼女たちを定義するときに使うべきものだと思います。本当にさまざまなことを試みています。たとえば「パンカスキス」(Pank―a―Squith)というボードゲーム、色彩の使用【WSPUは紫・白・緑をテーマカラーとしている】、そしてさまざまなイメージ、そして多くの楽しい活動。しかし、私たちはミリタンシーのみに注目してしまいます。最後のポイントとして、彼女たちは、直接的な行動を恐れなかったということです。彼女たちは恐れず、自らがミリタンシーを受けることも躊躇しませんでした。大義のために必要な暴力を受ける心構えがありました。それは、宗教的な熱狂のようなものでもありました。それが本当に必要だったのか、有用だったのかなど未だに議論されますが、私は単純な答えはないと思っています」
――現代の人は、女性参政権運動をどう見ているでしょうか?

「ポピュラー・カルチャーの一部になっていると思います。サフラジェットたちは少し美化されていますね。参政権運動には他の組織もありました。たとえば、女性自由連盟(WFL)や女性参政権協会全国同盟(NUWSS)など。しかし、そうした組織については一般にまったく知られていません。WSPUだけが知られています。こうした運動の複雑性が消えてしまったことは悲しいことですが、これはWSPUのイメージ、PR活動があまりにも賢く優れたものだったことを意味します。それだけでなく、私たちは彼女たちの勇気に感銘を受けます。彼女たちを批判しながらも好きなのも、ミリタンシーのおかげです。彼女たちが私たちの記憶に残っているのは、この直接的な行動のためなのです」
――最後に、この映画にメッセージを寄せてください。

「映画を見に行ってください。とても美しい映画ですから。あなたの感情を揺さぶるでしょう。しかしそれだけでなく、日本で、どこまで女性の社会進出が進んでいるかなど、考えさせられる映画です。個人として何ができるのか。モードの政治化の軌跡は、彼女の置かれた状況があり、とても過激なものです。日本の女性たちは、あのレベルの暴力を経験する必要はありません。なぜなら、保護してくれる法律もありますし、多くの機会も与えられているからです。しかし、もう少し何かできるだろうか、他の者たちのことを考えられないだろうかというモードと同じ選択肢は持っていると思います。たとえば、モードがマギー【若い洗濯婦】を助けようとしたように。私の望みは、より豊かな人生のために、人々がその選択をし、共に協働するために連携してくれることなのです。日本でも最近、18歳以上に選挙権が与えられたそうですが、ぜひ若者たちにもこの映画を見に行ってほしいと思います。なぜ選挙権が必要なのかわかるでしょう」
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年1月20日 新聞掲載(第3173号)
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この記事の中でご紹介した本
イギリス女性参政権運動とプロパガンダ/彩流社
イギリス女性参政権運動とプロパガンダ
著 者:佐藤 繭香
出版社:彩流社
以下のオンライン書店でご購入できます