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漢字点心 第214回
2017年1月27日

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年輩の方にはなつかしい小説、石坂洋次郎の『若い人』を再読していたら、むずかしい漢字に出会った。修学旅行の女学校生たちを載せて走る夜行列車が、「轟音を発しながら、闃寂(げきせき)とした夜の軌道」を走るというのである。

「闃寂」とは、「静まり返っている」という意味。一方で「轟音」を発しながら、一方で「闃寂」としているというのは、妙といえば妙である。

ただ、「闃」は、「人がいなくて静か」という意味。「門がまえ」の漢字だから、本来ならば人がいるべき建物に、人の気配が感じられないという雰囲気なのだろう。

レールの上を走る汽車は轟音を立て、その汽車には百名近い女学生が乗っている。昼間はにぎやかだった彼女たちは、しかし今は眠りの中。そんな状況で、主人公の男性教師は、ひとりで泣いている美少女との妖しくも危険な会話に引き込まれていく……。

「闃寂」も、そんな場面の舞台装置としてならば、ふさわしかろう。(えんまんじ・じろう氏=編集者・ライター)

2017年1月27日 新聞掲載(第3174号)
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