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誰も見ていないから 第16回
2016年10月7日

誰もみていないから ⑯

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〈Don'tdisturb〉(油彩、キャンバス/53×33.3cm/2014年)ⒸShinjiIhara

「あなたに逢いたくて」

ある日、アトリエで絵を描いているとラジオから「旅をしない若者たちが増えている」と聴こえてきた。昔ほど海外旅行が特別なことではなくなった今、外国に憧れや夢を抱かなくなった若者が増えてきているのかもしれない。

最近、近くの喫茶店に行って仕事をすることが増えたが、冷房の効きすぎた店内に限界を感じて、体温調整と休憩も兼ねて近くの公園までよく散歩をするようになった。毎回、同じルートを15分くらいかけて歩くのだが、ここは観光地だけあって平日でも多くの外国人旅行客を見かける。実際に話掛けるわけではないが、どこから来たのだろうとか、この人たちは何を話してるのだろうとか、人間観察と妄想を一人で楽しんでいる。

今年の三月に友人に誘われて行ったドバイでも、カンドゥーラという白い衣装を着たアラブ人にばかり目がいってしまい、ブルジュ・ハリファやジュ・メイラといった珍しい建築物にはあまり興味を持てなかった。

インターネットを開けば、現地へ行かずともすぐに海外の情報が得られる。そんな時代だからこそ、“人との繋がり”が世界の見方を変えてくれると信じている。日本にいても世界の人々と簡単に繋がれるのだから、誰かに逢いに行くために海を渡るのも悪くないと思う。
(いはら・しんじ氏=画家)
2016年10月7日 新聞掲載(第3159号)
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