【横尾 忠則】黒澤さん、小津さん、ボウイ、 美輪さん、ついにはニーチェ。 百花繚乱の夢は続く|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側 第275回
2017年1月27日

黒澤さん、小津さん、ボウイ、 美輪さん、ついにはニーチェ。
百花繚乱の夢は続く

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2017.1.16
 松竹と東宝の合作映画のポスターだって!? 小津安二郎と黒澤明じゃ水と油、静と動の激突じゃないか。でもちょっと待てよ、この両者の要素はぼくの中にあるものじゃないかな。あれこれ理屈をこねないで、ごく自然に思ったまま作れば、出きちゃうんじゃないかな。「映画にピッタリのができました」と簡単に採用されちゃった。この話、夢だと言わなきゃ現実で通るよな。

「シニア・シー」という企業誌で『死なないつもり』の取材。手土産に自社製品のローヤルゼリー、ブルーベリー、グルコサミンの健康食品を頂戴。無農薬自然商品(非サプリメント)は大歓迎。どら焼、大福等の甘味食品の時代はぼくにとっては終りました。
2017.1.17
 たまに夢らしい夢の話をひとつ。郷里の家の前で元お手伝いさんが辺りをキョロキョロ見廻しながら、「さっき空から人が降ってきたんだけれど、どこにもいないんですよ」。ちょっと先でも二、三人が集まって空を見上げながら騒いでいる。その時一機の飛行機が飛んできて、飛行機から馬と犬を落とした。飛行機から降ってきたと思われる動物達が畑の一角にひとかたまりになって立ちつくしている。「あゝ、そーか、空飛ぶノアの方舟なんだ」とふと思った。

神戸のぼくの美術館の平林さんが次回展の打ち合わせに生姜蜂蜜漬を持って来訪。自然食品大歓迎。

骨の髄まで冷えるので早々に帰宅。
2017.1.18
 デヴィッド・ボウイがこの間からアトリエで泊っているが、いよいよ明日帰国。今日は買物に出掛けると外出した。だけど、ちょっと待てよ、ボウイは死んでいるんじゃないの? やっぱり夢だよ、これって。それにしても死者がよく夢にやってくるもんだ。

神戸から山本さん、田中さん来訪。アトリエで平林さんと合流。

スコセッシ、スピルバーグ、コッポラが絶賛しているという映画を観る。地球創生、人類誕生の夢のような映像はNHKの科学映画? 宣伝コメントは御遠慮します。
2017.1.19
 開演時間のベルが鳴って座席に着く。美輪明宏さんが駆けつけてきたので近くの座席を確保するが、隣の女性が「入れ代りましょうか?」と美輪さんに席を譲ってくれた。たったこれだけの夢! わざわざ夢にするほどの夢でもないよね。

榎本了壱さんと隣町の北沢さん来訪。榎本さんが澁澤龍彥さんの「高丘親王航海記」を絵にした本を持参。執念で描いた絵の背後の情念に驚く。この話は現実。
2017.1.20
 公衆便所の中で二人のおっさんが話をしている。「男はもうこれ以上歩けないというが、女はまだ歩けるという、とニーチェが言っているんだよ」。黒澤さん、小津さん、ボウイ、美輪さん、ついにニーチェまで出てきて百花繚乱の夢はまだ続く。

ひと眠りして、ゆかたのまま温泉浴場に行くと、朝日にまぶしく肌が光るスリムな若い全裸の女性が目の前に。同行の編集者の奥さんらしい。これはすぐ夢だとわかりますよね。

先週の漢方が失くなったので、(1)と(29)の他に(85)、それから欲しくない喘息用の吸入器を処方されちゃう。
2017.1.21
 伊勢丹の新館に通じる長い連絡通路を歩いていたらこの間取材に来たカメラマンに会う。洋書売場への道順を聞くと教えてくれた。なんてありきたりの味も素っ気もない夢だこと。

夜景を描いた絵の下部に数枚の額入りの小さい絵がキャンバスに張りついている。その小さい絵が動画になって動いているが、なんて下手くそな絵なんだろう。どうやらこの絵の作者はぼくらしい。もっとましな夢はないのかねえ。

深夜に目が覚めたらテレビでトランプ新大統領の就任式で演説の真最中。そんなに国際協調を否定したいなら、一層のことメキシコの国境だけじゃなく湾岸にも巨大な壁を作って外国船も阻止して、自国製品でまかない、自国人を雇用して壁の中で自給自足をしちゃえよ! 悪夢につき合っておれない。もっといい夢を見たい。頭からシーツを被って再び眠る。
山田洋次さんと増田屋で(撮影・房俊介)
2017.1.22
 映画のスタジオ内で高倉健さんの妹さんといわれる方から立派な花束をいただく。なんでも東京ステーションギャラリーでの高倉健展でお世話になったというお礼らしい。「こちらこそ健さんの生前には色々お世話になりました」。妹さんは実年齢よりもうんと若く見えた。夢だか現実だかわからない夢を見た。

久し振りに山田監督と増田屋で。店内に貼られている「家族はつらいよ2」のポスターの前で記念写真を。

アトリエの暖房が故障したので公園のテラスに仕事の一式を運び、買ったばかりの『平田篤胤―霊魂のゆくえ』吉田真樹著(講談社学術文庫)を読む。

最近は物がよく失くなる。数分置きに次から次へと消滅したように失くなる。物が失くなるのか記憶が失くなるのかどっちだ。一日中探し廻っている。迷路か冥土か知らんけど挙句の果ては迷宮入りだ。こーいうことは外的要因か内的要因か、一種の神隠しじゃないのかね。現実と非現実の領界が曖昧になる境域時期に達しているのだろうか。
2017年1月27日 新聞掲載(第3174号)
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