2016年度 石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 授賞式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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受賞
2017年1月27日

2016年度 石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 授賞式開催

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昨年12月7日、都内で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞の授賞式が行われた。受賞したのは公共奉仕部門の大賞が日本テレビ報道局取材班の「NNNドキュメント’15〈南京事件 兵士たちの遺言〉」。草の根民主主義部門の大賞が山陽新聞「語り継ぐハンセン病~瀬戸内3園から~」取材班「語り継ぐハンセン病~瀬戸内3園から~」。奨励賞は公共奉仕部門が新潟日報社原発問題取材班の長期連載「原発は必要か」を核とする関連ニュース報道。草の根民主主義部門が菅野完氏の『日本会議の研究』(扶桑社)。
日テレNNNドキュメント清水潔氏
選考委員代表の挨拶で朝日新聞社顧問の秋山耿太郎氏は<「南京事件 兵士たちの遺言」は、10月の授賞発表の折にネットで日本テレビ取材班がネットに書かれたコメントに尽きているように思う。それは「何も足さない。何も引かない。ただ事実と信ずるものだけを淡々と伝える。」という言葉だった。だからこそ事件から79年を経た今日、様々な意見がある南京事件の真実の姿に限りなく近づくことが出来たのだろう。取材班のジャーナリズム精神に敬意を評したい。またこの作品が出来た土台には、昭和12年12月の日本軍による南京攻略の現場にいた兵士たちを長い年月をかけて訪ね歩き、証言を引き出し、また日記など一次資料を集め続けた民間の研究者の方がおられる。この方の協力がなければこの作品は生まれなかったという意味で、その方にも敬意を表したい。
山陽新聞社 (左)阿部光希氏、平田桂三氏
「語り継ぐハンセン病」も大変に重いテーマに挑戦されたものだ。すべての患者を隔離して療養所に閉じ込めてしまう、らい予防法が1996年に廃止されてから20年。国の政策の誤りを認定した2001年の熊本地裁判決が確定してからも15年が経つ。マスコミも含め世の多くの人々は、ハンセン病の問題は決着済みとばかり無関心を装い続けてきた。しかし取材班はハンセン病が終わっていないということを知ってしまう。偏見と差別はむしろ私たち一人ひとりの心のなかにあるのではないか、だとすればハンセン病の今を伝え続けなければならない。地域に根ざすメディアの使命感、気概が伝わってくる作品だった。
新潟日報社 仲屋淳氏
 奨励賞の一つは「原発は必要か」と問いかける一連の報道だ。柏崎刈羽原発の再稼働問題を巡っては様々な思惑が絡み合い賛否が渦巻いている。その中で報道していかなければならない地元新聞の立ち位置を踏まえた上で取材班は知恵を絞って取り組んだのだろう。原発を再稼働させないと地元の経済はもたないのか、原発は地域経済を救う打ち出の小槌なのか。問題をその一点に絞り込んで、地元企業の聞き取り調査などを通じ、いや原発の経済効果は限定的なんだという事実を伝えることに成功した。原発再稼働をめぐる議論の場に、新しい観点からのデータを淡々と提供してみせた点に、取材班の皆さんの工夫とセンスの良さがにじみ出ている。

菅野 完氏
『日本会議の研究』は、時の政権に少なからぬ影響を与えているように見える実像がはっきりしない組織の実態は何なのかという大変に興味深い、難しいテーマに一人で正面から挑んだ作品だ。古い文献を調べ、宗教団体の集会に参加し、インタビューを申し込み、断片的な情報を積み重ねることで全体像が浮かび上がってきた。政治権力を支える影の部分にまで掘り下げていかねばならない取材はなかなか苦労が多かっただろうと拝察する。菅野さんも「何も足さない。何も引かない。ただ事実と信ずるものを淡々と伝える。」というジャーナリズムの基本に徹することで大きな壁を乗り越えられたのではないか>と評してそれぞれの受賞作を讃え、各受賞者も自身の仕事を振り返りつつ挨拶を行った。

2017年1月27日 新聞掲載(第3174号)
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