【横尾 忠則】『怪人二十面相』と、大人 になりそこなった誇り|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側 第260回
2016年10月7日

『怪人二十面相』と、大人 になりそこなった誇り

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アトリエにて南雄介さん、藤井亜紀さんと


2016.9.26
 襟を立てたトレンチコートを肩に引っかけた石原裕次郎が拳銃を構えている日活の映画ポスターのような絵を描いている夢を見る。

国立新美術館の南雄介さんと東京都現代美術館の藤井亜紀さん来訪。南さんはダリ展のためにポルトリガトのダリの家を見学、ぼくはダリに会った話などを二人で来月会場でトークをする。藤井さんは美術館のメンテナンス期間中都庁に勤めていると言う。小池都知事の姿はまだ「見てない」そーだ。
2016.9.27
 『ピカソになりきった男』を読了。他人になりきるのは悟りの修業に近い?

古書店に四百冊持って帰ってもらう。
2016.9.28
 朝、庭に出ると地面があちこちボコボコ土が盛り上っている。モグラが走った跡だろうか?

なんだかこの間から手足が痒い。タマがいた頃蚤がいた。おでんのテリトリィは階段だからベッドルームには這入ってこない。でもシーツの上で跳びはねている蚤を発見。蚤が人間大になると国会議事堂を軽くひと跳びするらしい。そんな蚤退治に夢中になる。
2016.9.29
 駅前の三省堂を出ようとすると雨。成城石井に飛び込んで傘を買う。閉店間際で若い店員がぼくと一緒に出てきて「一緒していいですか?」と聞く。成城の奥に巨大マンション群があるらしいが、そこの住人だ。わが家と方向が違うが付いてくる。いつの間にか雨は止んでいる。辺りは暗く、田んぼ道を二人で歩く。やがて山道に差しかかった所に小さいわが家がある。店員と別れて家に這入ろうとした時、近所の者だという中年の男女が突然現われて、「お邪魔していいですか?」と言う。玄関に出て来た妻は三人も人を連れて帰ってきたので驚いた顔をしている。まあ近所のよしみだ、許そう。それにしても小さい家で玄関のひと間しかない。妻は玄関脇の台所でコトコト音を立ててお茶の用意でもしているらしい。ぼくはこの厚かましい三人を相手にやっぱりヤだなと思う。

次の夢は西脇の杉原川に面したどこかの家にいると向こうから山田洋次さんと印刷所の人が「家族はつらいよ2」のポスターの校正刷を持って、「ここにいらっしゃると思ったら、やっぱり」と山田さん。家の窓から見える川原では人が沢山遊んでいる。川向こうの道路にはカップルが。双眼鏡でカップルを眺めるが「キスをする二人の口唇がクローズアップでないとね」、と山田さん。やっぱり映画的に観察されるんだ。

東京ステーションギャラリーの冨田さんと毎日新聞の立川さんと11月に開催される「高倉健」展でぼくが関わるセクションの打合せを。うまくいくと面白くなると思うがどのくらいうまくいくか?
2016.9.30
 次々と何やら脈絡のありそーななさそーな仕事の依頼があるが、手をわずらわすようなものではない。

岩波文庫の「私の三冊」を選ぶアンケートには座右の書的な『老年について』(キケロ)、『パイドン』(プラトン)、『東京日記』(内田百〓)を挙げる。

山田さんと松竹の濱田さん、秘書の最首さんがサプライズ来訪。「家族はつらいよ2」のタイトルバックの相談に。前回とはコロッと変ったスタイルにしてみたい。喜劇だからタイトルも笑えるものにしたい。

山田さんに借りた久里洋二さんが88歳になって描いた五百頁のマンガ本が全篇エロイ。88歳老人のエロ魂は怖過ぎる。マンガが芸術の域に達したのもつかの間、それを飛び超えて性の彼岸まで暴走。オノ・ヨーコさんは「彼の革新的創造に感化され、次世代のアートの世界へと足を踏み入れる事が出来ました」(帯文)そーであります。

暗くなるまで読んでいたが久里さんの精力絶倫には負けます。
2016.10.1
 何を勘違いしたのか今朝の新聞広告を見て『怪人二十面相』(新潮文庫)を買ってしまった。少年時代から大人になっても何度も読んだ本をなぜまた。解説文の辻村深月氏は「二十面相を読み、愛し続けながら大人になれたことは、私の誇りだ」と。ぼくは大人になりそこなったことが誇りだ。
2016.10.2
 風呂に入っている間に森村泰昌さんが来ていた。次の場面では西脇の誰かの家で酒井忠康さんがぼくの個展のカタログを森村さんに見せているという夢らしくない夢を見る。

山田さんと一ヶ月振りで増田屋へ。斎藤寅次郎監督の脚本家が面白い場面やせりふを書いても斎藤さんは「面白くするのは俺だ、脚本に書く必要ない」と拒否したそーだ。面白い話をひとつ。喜劇俳優高勢実乗の恋人を息子が取った。「もうすぐ俺は死ぬんだから、死んでからにしろ!」と言ったそーだ。

自然の多い野川公園に行くのは日常との断絶によってストレスレスになるためだ。夕方になるとジョギングラッシュになる。(よこお・ただのり氏=美術家)
2016年10月7日 新聞掲載(第3159号)
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