【横尾 忠則】作者(ぼく)が面白がってる 「ヨコオ・マニアリスム」展|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側 第253回
2016年8月12日

作者(ぼく)が面白がってる 「ヨコオ・マニアリスム」展

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千代の富士化粧廻しをデザイン

2016.8.1
 昨夜は都知事選の速報騒ぎに就寝のペース乱されたが、早朝、元千代の富士死去には驚いた。千代の富士の化粧廻しのデザインをした時、九重親方と二人でわが家に来られた時、千代の富士が子供みたいに犬を怖がった懐しい一夜を想い出す。ご冥福を祈ります。

昼過ぎ自転車でアトリエに向う途上、大雨に遭いずぶ濡れ。晴れた頃神津善行さんが「散歩の途中くたびれたので一休みさせて」とアトリエへ。老人仲間は遠慮がなくていいでしょう?
この間の瀬戸内さんの「老活」のことだけれど「ネットにも出てるわよ」。「老人が快適で楽しい日々を過ごすこと」で老後難民にならないための方法らしい。

オークションに出た65年のうんと初期の絵をNYのアルベルツ・ベンダ画廊が買い取った。下手すると行方不明になるところを救ってくれた。
2016.8.2
 アトリエのベランダで東から西に物凄いスピードで走る飛行物体に唖然。隣りにいた土屋嘉男さんが気づいた時は飛行雲のような軌跡がかすかに残っていた。「土屋さん、夢だからガッカリしないでね」。

「文藝」の鼎談を彫刻の森美術館でと、保坂和志さん、磯﨑憲一郎さん、編集者らと箱根へ。箱根湯本で食べたうな重は最高。遅刻の保坂さんは可哀想に登山鉄道車中で駅弁。初めて乗った登山鉄道はもうこりごり。冷房はなし、騒音で耳障害増幅。鼎談は作者が会場をナビゲートしながら、いい加減な説明をする。何しろ二人はエライ小説家、説明なんて信じてないはず。だからイイ湯カゲン風の説明。
2016.8.3
 昨日の箱根詣で疲れ果てて過眠。その過眠でまた疲れる。
「美術手帖」のダリ特集で成相肇さんら5人も取材に。「なぜ日本人はダリが好きか?」。ぼくは好きじゃないけれど。ダリに会った珍しい日本人だから彼との会見を聞きたがられる。なんで日本人好みなのかねえ。過剰説明の絵だからじゃない? それと文学的過剰、無意識的過剰な人だからじゃないかな?

夜、朝日新聞書評委員会へ。最近は自分の言葉に信頼が持てないので、「絵で書評します」宣言を勝手にする。久し振りに細野晴臣さん、相変らず煙草喫っているのネ。命知らずのところはエライ!
2016.8.4
 東京新聞「この道」70回分書きだめ。完結は百回近くなりそう。
夕方、30分散歩。ウォーカーとすれ違うと汗の臭い。

藤田嗣治のコスプレ(兵庫県立美術館で)。写真・蓑豊

2016.8.5
 神戸へ妻と。最近は新幹線の中が休息場所。新神戸駅に美術館の山本さん、田中さん迎えに。兵庫駅の近くのそば屋で昼食。2時半、記者会見。今回の「ヨコオ・マニアリスムvol.1」は面白い。個人美術館展はこうでなきゃ。45年間の日記やスケッチ、メモ、パレットなどを公開。会場内でアーカイブの作業の実演など、作者の自分が一番面白がっている展覧会だ。


4時半、開会式。例によって郷里西脇からチャーターバスで現80歳、元女子高生らとミニ同窓会。井戸知事の恒例賛歌二句を戴く。「縦横斜め驚きの作品がたゞ一同に並び陳べたり」「ようこそここワールドにお出ましにたゞ今からは興にお乗りませ」

夕食は蓑館長、理事長、副館長、学芸員らと東天閣へ。蓑さんと60年代のニューヨークの話に花が咲くが、昔の話には皆んなそれほど関心ないん違う? 昔を語ることは今を語ることなんやけどなあ。

神戸ホテルオークラにチェックイン。
2016.8.6
 チェックアウトをして兵庫県立美術館の藤田嗣治展へ。どーも好きになれへん画家や。郷に入って郷に従わへん藤田が評価されているようやけど、ある程度、郷に従った方が美術史の王道の文脈に乗れたはずやけど、どうなんやろ。デッサンに忠実に従ったところも日本人的画家というか日本画的で、日本人を主張し過ぎちゃうのと違う? 今の若い日本人の日本画風傾向には喜ばれるかも知れへんけど、まあ人ごとや、関係ない。
2016.8.7
 家の中に野良猫が侵入しているので追い出そうと勝手口へ。そこにあった素焼のブッキラ棒の人型の陶器が、「この中に入りなさいと言われて入っている者ですが」とぼくの頭の中で囁く。神に司る精霊らしい。その時家の中に入ってきて白いスーツの若者が手にピストルを持って、自分の顳顬に一発。その場に倒れる。物の中に入ったモノもいれば、肉体から出ていったモノもいるというそんな夢を見る。

昨夜、帰宅以来姿を見せなかったおでんが深夜に玄関の板間でベタッとなって寝そべっていた。なんや居たのか。

日曜の昼はきまって増田屋に現れる山田さん姿なし。あっそうか、昨日から「家族はつらいよ・Ⅱ」のクランクインだった。

コンビニで医学博士著『自律訓練法』買う。毎朝晩来ていた病気気味のホームレス猫、このところ顔見せず、妻心配する。あの寂しい眼はなんとなく死期を暗示させる。(よこお・ただのり氏=美術家)

2016年8月12日 新聞掲載(第3152号)
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