集中連載6= 吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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文系学部解体-大学の未来 第6回
2016年10月21日

集中連載6= 吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』

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未来のために 役に立つと言いつづける

吉見
その通りです。大学の自由は、そうした超越的な権威による保証から完全に自由になることはできないと思います。例えば、ベルリン大学ができた時には、文化というものが重視された。そして文化を学ぶ、あるいは発見する学として人文学が発展する。人文学が追究した文化が、国民国家を正当化するためのものとして役に立つと考えられていたから、人文学は保護された。そのことを抜きにして人文学の発展はありえなかったのも事実です。
室井
カントの理想としてあった、他の学問の基礎となるべき下級学としての哲学部。その理想が、必ずしもうまく機能していなかったわけですよね。僕も本を書いている過程でわかったことがあって、日本の帝国大学も、法文学部は別として、単体で文学部(文科)を持っているのは、東京帝大と京都帝大のふたつしかなかった。ほとんどの大学が、海外の大学に合わせるぐらいの形でしか、文系の学部は作らなかった。私学の方が、大正時代の大学令で、文系の学問を学ぶ学部を一般的に持つようになった。文科省が今しようとしている改革は、あの段階に国立大学を戻すことなんじゃないか。
吉見
ただ、そこで敗北主義にならないためには、人文系の学問は、未来のために「めちゃくちゃ役に立つ」と言いつづけることしかないと、私は思うんです。
室井
話題をまた変えますが、最初に「甲殻類から脊椎動物へ」という話をされましたよね。比喩が伝わりにくい感じがしたので、補足しておうかがいします。甲殻類であるカニやエビ、サザエは、ガチガチの殻に囲まれている。つまり大学がタコツボ化しているという話ですよね。それが学際性とか国際性とか、開かれたものになっていく時に出て来るのが、なぜ脊椎動物なんですか。
吉見
内部の組織をそのままにして、単に殻を取り除いて、外に開いて、大学を学際的・国際的にしましょうとすると、ナメクジになってしまうわけです。質の劣化ですね。
室井
なぜナメクジが悪くて、ナメクジウオはいいのか。ナメクジウオというのは、吉見さんも言われたけれど、脊椎動物の起源として考えられている。京都大学にいた篠原資明さんが以前、「軟体構築論」ということを主張されていて、タコみたいに生きるのが美しいと言っていました。タコでは駄目ですか。いろんなところに入っていけるし、フレキシブルでいいと、僕は思うんですよ。
吉見
タコやナメクジでいいという立場もあり得るかもしれませんが、私はそうは思わないのです。やはりナメクジウオのほうがいい。芯が通っていて、構造化されている方がいいと、私は思います。なんでもありで、どんな科目を取ってもいいということではない。そこには一定の決まりがある。そういう中で、専門を組み合わせることの可能性を追求したいと思います。 

<次週に続く>
2016年10月21日 新聞掲載(第3161号)
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