集中連載11=吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』 普遍的な価値に奉仕する|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 連載
  3. 文系学部解体-大学の未来
  4. 集中連載11=吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』 普遍的な価値に奉仕する・・・
文系学部解体-大学の未来
2016年11月25日

集中連載11=吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』
普遍的な価値に奉仕する

このエントリーをはてなブックマークに追加
(前回のつづき)

――アメリカのシステムがいいと押し付けるはつもりはないんですが、僕はアメリカのカレッジで育って来て、文系の価値を考える際に、常に出て来るのが、民主主義に必要であるという話です。たとえばギリシャ哲学がなくては、今の民主主義はなかった。あるいは憲法は市民と国家の契約書であり、それを読み、解釈し、深読みする。それも大学で人文学を学ぶことによって可能になる。そうやって大学と民主主義を繋げて考えることが、文系を守るためのひとつの手段になりませんか。
吉見
今の国家が、本当に民主主義が大切だと思っているのならば、それでうまくいくかもしれませんが、そう思っていないかもしれない。だから我々は、絶望的な戦いをしているような気もします。おっしゃることには、まったく同感ですよ。これが大学は役に立つと言いつづけている理由にもなりますけれども、民主主義に限らず、大学は普遍的な価値に奉仕するのです。普遍的な価値、これはひとつとは限りません。キリスト教の世界だったら、それはイエス・キリストになる。神です。民主主義というのも、近代が作り出した、ある普遍的な価値です。でも、別の視点からだと、普遍的価値には、地球社会の持続性ということもあるでしょう。あるいは、もっとポストコロニアルというか、先住民たちの権利ということもある。そうした価値の普遍性に目を開かせることが、大学の役割だと思います。
室井
言い方を変えれば、僕らは啓蒙的なんですよ。啓蒙の理念をまだ信じている。ヒューマニティーズって、そういうことですよね。人権や自由もそうだし、人間の生き方の理想を求めるところがある。そうした理想が、なかなか通じなくなって来ている気はしますね。
吉見
大学である以上、それを捨てるべきではないと、私も室井さんも思っています。文系理系の話以前に、これがユニバーシティの根幹にある理念です。ただ今の政府や、日本の社会に対して、そういう話が通じるのか。いささか疑問です。それを言うよりは、長い目で見れば役に立つという話をしつづける。そのような戦略を取るという選択を、私はしているわけです。
<次週に続く>
2016年11月25日 新聞掲載(第3166号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
吉見 俊哉 氏の関連記事
室井 尚 氏の関連記事
文系学部解体-大学の未来のその他の記事
文系学部解体-大学の未来をもっと見る >
Notice: Undefined variable: category_check in /var/www/dokushojin.com/htdocs/article.html on line 1654