集中連載12=吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』 普遍的な価値に奉仕する|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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文系学部解体-大学の未来
2016年12月2日

集中連載12=吉見俊哉・室井尚『文系学部解体』VS『「文系学部廃止」の衝撃』
普遍的な価値に奉仕する

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(前回のつづき)

――「長い目で見て役に立つ」という場合、それは単位の話で、日本人一億二千七百万人にとって役に立つという話なのか。そうではなく、百人に役に立つ学問があってもいいんじゃないかと思うんですね。そのことをきちんと示していく回路を作っていかないと、人学部を根付かせていくことはできないのではないでしょうか。
吉見
具体的には、どういうことを考えていますか。

――たとえば地域単位で考えてみると、沖縄の大学は沖縄の大学の特色があると思うんですね。民俗学的なものと結びついていくという方向だって、考えられるのではないか。
室井
たとえば地域に貢献する地域デザイン科学部などが、そういう方向で作られている。行政と手を結んで、地域に貢献する。でも実際には、そこでは短期的な貢献が求められているのが実情ですよ。
吉見
地域の伝統を掘り起こすということですね。それも役に立つということの一面だと思います。ただ、それだけで強い学問や学部になるかどうか、不確かな面もありますね。

――吉見さんがおっしゃっている戦略は、何処に向けたものなのかお聞かせください。政府、官僚、企業、あるいは民衆に向けた話なのでしょうか。
吉見
それは全部が含まれます。最初に申し上げたように、昨年文系学部廃止の問題が議論になりました。その時にメディアの偏見や歪んだ報道が見られた。確かに文科省が十数年来やって来た大学政策には様々な問題点があります。しかしそのもっと根底に、やっぱり文系は役に立たない、役に立つのは理系だよねという社会的通念があるのではないかと、私は考えている。その通念は必ずしも正しくない。だから、違う考え方をしようと呼びかけているわけです。では、そうした通念を持っている人はだれか。産業界のビジネスマンかもしれないし。役人かもしれない。しかしそれ以上に、もっと身近にいる、皆さんのお父さんお母さんが持っているかもしれない。そういう人たちに対して、文系は役に立つと言っていくことに意味がある。さっき室井さんが「啓蒙の理念をまだ信じている」と言われたけれど、おっしゃる通りだと思います。啓蒙を引きずらざるを得ない現代の大学人としては、それをやらなくて、どうするんですか。
室井
吉見さんは、僕のように人格的に破綻していない人なので(笑)、是非中教審の委員になっていただいて、まともな大学改革をやって欲しいですね。僕も吉見さんの意見にまったく反対していません。「役に立つ」という言葉が通じるのならばいい。でもそれで通じるかは若干疑問であって、結局は役に立ちそうな領域だけ残して、哲学や芸術は省かれてしまうんじゃないかと危惧しているわけです。 
<次週に続く>
2016年12月2日 新聞掲載(第3167号)
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