第六十二回 角川短歌賞、角川俳句賞の贈呈式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
哲学からサブカルまで。専門家による質の高い書評が読める!

▲トップへ

  1. 読書人トップ
  2. ニュース
  3. 受賞
  4. 第六十二回 角川短歌賞、角川俳句賞の贈呈式・・・
受賞
2017年2月3日

第六十二回 角川短歌賞、角川俳句賞の贈呈式

このエントリーをはてなブックマークに追加
第六十二回角川短歌賞、角川俳句賞の贈呈式が、一月十九日、東京・丸の内のパレスホテル東京で開催された。短歌賞は佐佐木定綱「魚は机を濡らす」と竹中優子「輪をつくる」(各五〇首)に、俳句賞は松野苑子「遠き船」(五〇句)に決定した。

短歌賞は選考委員を代表して、島田修三氏が選考経過を話した。「受賞作が二つ並んだのは、選考委員の間で評価が真っ二つに分かれたからです。今静かに見返すと、二作押したのは正解だったと思います。それぞれに独自の佇まい、あるいは輪郭がある。まず佐々木さんの作品のよさは、今自分が生きているリアルな現場から、自分に返ってくる直接のリアクションを詠おうとしている。現在に生きている人の勢いが、随所から感じられるということです。〈突っ伏して嘔吐を始めるお客様ありがとうございました大丈夫ですか?〉〈三階のフィリピンパブの店員の肩の刺青「夢」の意味らし〉。表現としては荒っぽさがあり、シニカルな視点や過剰な露悪性の是非も座談会で話題になりました。しかしむしろ、いかなる醜悪な現実でも受け入れ、その感触を率直な自分の言葉で歌い据えようとする姿勢を、評価したいと思います。

受賞者二人は対極に並んでいるのですが、竹中さんの作品のよさは、現実から少し身をひくところです。〈教室にささやきは満ちクリップがこぼれてひかる冬の気配よ〉〈女子が輪をつくる昇降口の先、花はひかりの弾薬庫として〉。現実を一端引いて、感覚の力でモチーフを選びながら、キャンバスに再構成していく。その繊細な技術と感覚を生かして、今後はさらに、厄介な現実をテーマとした作品に取り組まれることを期待したいと思います」

次に俳句賞は選考委員を代表して、高野ムツオ氏が選考経過を報告した。「今年はめったにないことに、非常にスムーズに決まりました。タイトルになった〈春の日や歩きて遠き船を抜く〉、それから〈帽子屋に汽笛の届く春の暮〉は、時間が映像化された俳句です。ウィットに富み理屈っぽい感じがしないでもない、という意見もありましたが、春の午後から夕暮れにかけての時間が、上手に表現されている。じっとした帽子屋の帽子と、遠くへ旅立つ船の汽笛の対比、遠近感もいい。〈春愁の旗立つやうにフラミンゴ〉〈出目金のいつもどきどきしてをりぬ〉は、生きものたちの生態の本質が表現されています。〈断層の上に国あり昼寝覚〉〈瘡蓋がシリアの形熱帯夜〉は、現代的な映像です。瘡蓋をシリアの形だと見たところに、作者の批評があります。今を生きる人の俳句です」。

会場では、第十一回角川全国俳句大賞と第八回角川全国短歌大賞の贈呈も行われた。贈呈式の後は新年会の賑やかな夜となった。
2017年2月3日 新聞掲載(第3175号)
このエントリーをはてなブックマークに追加