障害者週間・読書権セミナー 「読むこと・生きること・情報は命!」 すべての読書困難者への支援体制の実現 主催:大活字文化普及協会|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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催しもの
2017年2月3日

障害者週間・読書権セミナー
「読むこと・生きること・情報は命!」
すべての読書困難者への支援体制の実現
主催:大活字文化普及協会

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二〇一六年十二月七日、東京都千代田区の有楽町スクウェアで、大活字文化普及協会主催の内閣府障害者週間連続セミナー「読むこと・生きること・情報は命!」が開催された。平成二八年四月一日、「障害者差別解消法」が施行され、意思疎通支援の方法として大活字等の拡大文字表記や読み書き(代読・代筆)が明記された。また、政府が定める基本方針では障害者への理解促進を図る研究会等の実施も推進している。今回のセミナーでは、「すべての読書困難者への支援体制の実現」をテーマに、高齢者や障害者を対象とした情報バリアフリー出版等の新たな展開、現在の福祉行政制度に関する改良点などについて、有識者、当事者による基調講演とシンポジウムが行われた。その講演の一部をレポートする。(編集部)


セミナーは、前半に講演、後半にシンポジウムという構成で進められた。開会の辞、来賓挨拶に続く基調講演で、大活字文化普及協会の相賀昌宏理事長(小学館代表取締役社長)は、「すべての人に読書する機会の提供を 多媒体出版シリーズの展開など」と題し、出版という言葉の定義から次のように語った。

「日本の言葉の定義はもともと目が見える人々によって作られたわけだが、出版という言葉のもともとの定義も印刷によって頒布普及する書籍や雑誌の形だった。しかし、実際はそれ以外にCD―ROMやDVD、電子出版など、現実が定義を超えている。同様に、読書、読者というものの定義も既に拡張されているものと考える。そういう意味で出版社が活字で本を作る以外に、あらゆる知識や情報にアクセスし難い人に対して配慮する時代にきている。本や知識、情報へ近づき難いというのは視覚障害だけでなく聴覚障害、身体的な障害、ディスレクシアのような脳機能障害、さらに言うと経済的、介護などの時間的な制約も障壁になっている」。

さらに相賀氏は日本の読書環境について、全国の書店、図書館などのおおよその数字をあげながら、「今はデジタル化によって、一箇所で作られたものが別のところでも複製ができる時代がきている。例えば眼科などもひとつのチャンネルになる。そうしたさまざまなチャンネルを利用しながらみんなで使っていくことが可能な時代に、どういうチャンネルでどのように探していくかということをお手伝いしながら、さまざまな連携をして全体の底上げをしていきたい。潜在的な読者、利用者の方のもっとこういうものが欲しいといった声や「不便さ調査」と「良かったこと調査」の両方を取り入れていくのが、非常に大事なことだと考えている」と、締めくくった。

全日本視覚障害者協議会代表理事、大活字文化普及協会内専門委員会読書権保障協議会の田中章治委員長は、「読書権保障を実現する政策を考える会と読書権保障の実現について」と題し、次のように語った。

「二〇一四年一月に障害者権利条約を我が国も批准し、法律が整備されて、二〇一六年四月から障害者差別解消法が施行された。共生社会を目指して作られた法律だが、特に重要な考え方として“合理的配慮”ということがある。情報関係で言うと、代読・代筆を支援する体制を公的、民間含めて整えていって欲しいということをバックに活動している。五月二八日に「読書権保障を実現する政策を考える会」を作り、法律に関しても連立して実現していこうということになった。超党派ですべての党派の方から賛同を得て議員立法という形で作っていくことになるが、議員の方に顧問になっていただいて一歩一歩動き出している。もうひとつは会員という形で地方議会の議員たちに賛同者を募る活動、さらに市民の方にも呼びかけて会員になっていただき、図書館や出版関係者、福祉関係者などが賛同者に加わることによって議員立法のうねりを大きくしていく狙いで進めている」。さらに力を入れていることとして、代読代筆の支援員の養成を挙げ、「自治体の役割、国の責任として各々が責務を果し、運動を広げて読書権保障法を実現していきたい」と語った。

田中氏は最近自らが経験したこととしてマイナンバー通知を例にあげ、「封筒の外側の隅にマイナンバー通知と点字で書かれていたが、その中身についてはまったく点字がされていなかった」。そのため、田中氏がマイナンバーを確認したのは半年くらい経ってからで、必要に迫られて代読してもらった経緯があると述べ、「東京都でも公文書の規定に大活字が盛り込まれた。点字・音声・大活字の三つが揃わないと視覚障害者の情報提供は不十分」だとして、あらゆる場面で呼びかけることが、協会の中心的な活動であると述べた。

弱視者問題研究会の新井愛一郎氏は、当事者の立場から「障害者と高齢者にとって必要な出版と表示等の情報提供について」を次のように講演した。

「障害者権利条約を読んで、人間の多様性を認め合うことが条約の精神だと感じた。当事者自身も多様性を認め合う時代であることを意識してこれから臨んでいかなければならない。私は大きな本屋さんに行くとこんなにたくさん本があるのになぜそれを自由に読むことができないのか、本を読む愉しみを享受できないのかと寂しく思う。いくら大活字本が出たからといって、弱視の当事者たちは大きな字が読みたいのではなく、自分たちの読みたい本が大活字になってほしいと思っている。そういう意味で、世の中すべての本が読みやすい状態になってこないと本当の意味での本を読むということにはならないと思う」。

平成二七年三月、厚生労働省の障害者福祉サービスの日常生活用具給付制度(価格差補償の制度化)に、点字とともに、DAISY図書、大活字図書という項目が追加された。

「東京都では千代田区、江戸川区などでスタートしたが、これをすべての自治体で実施してほしい。そして制度を作っただけでなく、どのように弱視者に伝えていくか、広報活動も大切になる。誰もが自分の好きな本を同じような価格で読めるような条件がスタートした。是非すべての本が読める突破口にしていければと思う」と述べた。

また、見やすい表示の問題では、弱視の人が外出で困ることは大きくは二つあるとして、「一つは階段の段差で、一段一段目印がわかるようなものが欲しい。それと、トイレの男女識別が判りにくいことから見やすい表示を作った。このトイレ表示を一つの例として、見やすいデザインを氾濫普及させることが重要だと思う。見えづらい者自身がもっと自分の特性を表現していいという機運を上げていく意味でも、見やすい表示の普及をしていきたい。多様性を認め合うことと、弱視者が本を読むこと、情報を得ることにも結びつけていければと思う」と、締めくくった。

休憩を挟んで、「すべての人に読書する機会の提供を」をテーマにした後半のシンポジウムでは、パネリストとして、株式会社出版デジタル機構代表取締役副社長・廣岡克己氏が「出版デジタル機構の役割」、調布市立中央図書館館長・小池信彦氏が「公共図書館の役割」、山口県盲人福祉協会点字図書館館長・日本盲人社会福祉施設協議会情報サービス部会長の岡本博美氏が「点字図書館の役割 読み書き研修会事業」について、現状や活動について報告した。
2017年2月3日 新聞掲載(第3175号)
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