【横尾 忠則】思考は現実化し、空想は荒脳を駆け巡る。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側
2017年2月10日

思考は現実化し、空想は荒脳を駆け巡る。

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2017.1.30
 ヤモリが文明に仕掛けた自爆テロでアトリエの暖房器が破壊したのは9日前。本紙担当編集者角南さんは「ヤモリの黒焼(感電死)は恋の妙薬」と言う。そんな故事があったよな。死んだ二匹の性別は不明だけれど、「心中守宮画宿」ってとこかな。

神戸から美術館の平林さん驚異の巨大蜜柑を抱えて来訪。有機化合物Cは風邪対策必需食品。

夕方まで制作。この調子が持続できれば行け行けドンドン心配無用。

相変らず、わが家のホームレスは寒気を避けて暖気求めて台所に鎮座。(今回初めて読む方にはホームレスとはわが家専属・野良猫のこと)。
2017.1.31
 コマ切れ睡眠との因果関係は不明だがとにかく胸焼け。

平林さん、今日も来て次回展のカタログのデザインを中島英樹さんに依頼。

午後の西日でアトリエ内は温暖化。不眠の祟りでアリスが穴に落ちるように眠気がどんどん下へ下へと落ちていく。
2017.2.1
神戸から山本さん、田中さん苺と共に来訪。美術館がオープンして5年目、この辺でひとつ方向というか有り方を変えまへんか? について話合う。では休演中の公開制作を再開しまへんか? せやけどこれって、体力、気力、持続力、忍耐力、精神力、直感力、想像力、創造力、破壊力、空想力、造型力、腕力、画力、磁力、引力、重力、他力、自力、迫力、狂信力、遠心力、神力、仏力、人力、能力、知力、痴力、脳力、馬鹿力、非力、眼力、筆力、構成力、分析力、握力、動力、発信力、受信力、全力。とにかく宇宙に遍く霊力、魔力がなきゃ描けない実にシンドイ、シンドローム病になることでんなあ。

夕方、朝日の書評委員会へ。何が話されてんのかサッパリ聴こえまへん。人の言うことを聞かへんので耳がブロックされたんちゃうやろか? 「いえいえそんなことありません」と真面目に返答される。

帰宅後夕刊で木村重信さんの死去を知る。筆まめな木村さんの書簡は宝物。身の周りから死者が増え、生者が減る一方。
2017.2.2
 穂村弘さんの本は書評するぼくを書評するという何んだか訳のわからない夢を見る。夢の魅力はその訳のわからなさにある。文学よりむしろ絵画に近い。つまり、辻褄合わせをする必要がない。夢こそ真なり。

朝日のぼくの全書評を集めて出版を、という三社からの依頼が同時多発的に起こる。8年もやっているのに、なんで今のタイミングに集中するの? シンクロニシティって本当に不思議。宇宙的だよね。

駅前のアルプスで朝日の書評を書く。帰りに三省堂でルイス・キャロルの作品集と、どこに消えたか行方不明の三島さんの『英霊の聲』をまた買ってしまう。
アトリエにてフランチェスコ・ボナミさんと(撮影・徳永明美)
2017.2.3
 「ヴァレンティノ」のオートクチュール・ショーの会場構成の打合わせにイタリアからキュレイターのフランチェスコ・ボナミさん来訪。当初のショーの予定が大幅に11月に延期。町田市立国際版画美術館の個展とWので「ウーン? 困った!」と悩ましかっただけに助かった。このところバッティングが次々解除。ナポレオン・ヒル『思考は現実化する』通りに思考が現実化してくれる。

山田さんが日生劇場で音楽劇を演出。稽古が早く終ったのでとサプライズ来訪。寅さんの原型になったフランスの国民的喜劇の山田版。

長男がインフルエンザに。親が予防注射を打ってないことに気づいて水野クリニックに自転車で飛ばす。効力は二週間以後とか。
2017.2.4
 相変らず寒い。喘息で咽がヒューヒュー鳴る。おでんが変な顔して耳をそば立てる。面白いので無理に節をつけて咽を鳴らすと増々変な顔になってきた。

気温は低いが風もなく晴天。公園のビジターセンターのテラスで日向ぼっこの読書。時々やってくるお婆ちゃんが隣のテーブルで読書。いつも宗教的なパンフレットを読んでいる。

DVDでチャップリンの「ライムライト」を観る。ラストのバスター・キートンとの競演シーンは映画史に残る名場面だ。いたるところでチャップリンの人生哲学が名箴言を生んでいく。
2017.2.5
 誰か?を食事に誘ったものの、お金を持っていないことに気づく。なんだか恐ろしい結末に向って物語が進行するサスペンスドラマの主人公の心境だ。でも夢はいつも九死に一生の瞬間で救ってくれる。現実では味わえない体験だと思えば恐ろしい夢ほど人生を豊かにしてくれる。

起床と同時に躰が朦朧としている。インフルエンザの注射の後遺症か? それとも朝食の冷メロンが体内を冷やしたのか? 単なる風邪か? もしやインフルエンザだったりして? 空想は荒脳を駆け巡る。

夜、昼間のビデオで別府大分毎日マラソンを観る。中本健太郎初V。

今日も未刊の一日が終った。明日からまた未完の一日が始まる。就寝前の習慣はいつもミカンを一個。
2017年2月10日 新聞掲載(第3176号)
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