新 明日の農協 / 太田原 高昭(農山漁村文化協会)明日の農協をどうするのか  今こそ農協の真価が問われる時|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年2月10日

明日の農協をどうするのか 
今こそ農協の真価が問われる時

新 明日の農協
出版社:農山漁村文化協会
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安倍首相の農協潰しの勢いが止まらない。一昨年四月に農協法が改正され、TPPに反対した全国農協中央会を一般社団法人に変え、中央会の監査制度を廃止した。全農などの株式会社化の道も開いた。これで一段落かと思いきや、昨年十一月に政府の規制改革推進会議農業ワーキング・グループは農協改革に関する提言をまとめ、首相が後押しをしている。

ワーキング・グループの提言は、全農の購買事業の抜本的見直し、委託販売の廃止、農協経営の核である信用事業の農林中央金庫への譲渡などあからさまな農協解体を求めるものだった。その後自民党や農協が反発し、農協の自己改革を待つことになった。一般国民には「農協はとんでもない組織だ」との印象だけが残った。

これまでの動きから、安倍首相や規制改革推進会議のメンバーは新自由主義経済を信奉し、協同という行為が嫌い(無視)なのだということがわかる。

私は、民間組織である協同組合が行っている事業の懐に手を入れて、官が民間を規制するやり方はおかしい、ワーキング・グループの人たちは協同組合の持っている社会的な使命と役割についてまったく無理解・無知、と見ている。生協も同じだが、農協は小さな経済主体が横に結びつき、自らを守る「経済的弱者の自己防衛組織」であり、たとえ国家といえどもその運営に口出しすることはおかしいのだ。

そうした時、これまで長年にわたって農協問題を研究してきた大田原さんが『新 明日の農協』を出した。新が付いているのは、著者は一九八六年に故武内哲夫氏と『明日の農協』を出しているからだ。

著者は旧著で、協同組合でありながら農政補助機関であるわが国の農協を「制度としての農協」と特徴づけた。その「制度としての農協」は安倍政権の農協改革により終焉を迎え、農業と農協の現場からは、「制度としての農協」のくびきから解放され、協同組合本来の姿を発揮する生き生きとした明日の農協を展望することが可能となった、と捉えるのが本書の狙いである。

本書は、十九世紀にユートピア思想からヨーロッパに協同組合が発生、ほぼ同じ時期にわが国でも大原幽学と二宮尊徳によってその原型が作られたということから始まる。

明治期に入ると、商品経済が農村に浸透し、自主的な組合が各地に発生し、現在の農協の前身となる産業組合を法的保護するために、産業組合法が一九〇〇年に制定される。それ以来、産業組合(農協)はその時々の国策や農業政策に翻弄され、時には農政の推進・実施母体として利用されながら今日に至っている。

では明日の農協をどうするのか。著者は、「農協にとって一つの時代が終わった。次の時代をどう展望するか、これまでの歩みを総括することによって、その見取り図を得ることが自己改革を確かな基盤に置くことになる」としている。農協の歴史の入門書にもなっている。
この記事の中でご紹介した本
新 明日の農協/農山漁村文化協会
新 明日の農協
著 者:太田原 高昭
出版社:農山漁村文化協会
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年2月10日 新聞掲載(第3176号)
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