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Forget-me-not
2017年2月17日

Forget-me-not➆

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ゲイであることに気がつきながら、誰にも打ち明けることができず悶々とした日々を送っていた中学生の頃。ⒸKeiji fujimoto

1996年の春。僕が13歳になる半年ほど前のことである。

それまでとは何かが違っていた。身長が伸び、毛が生えたということだけではない。なんとなく気がついてはいたが、時が過ぎれば自然に消えていくと思っていたこと。すなわち同性愛者であるという現実にいよいよ目を背けることができなくなったのだ。

受け入れ難さや自己嫌悪、寂しさや将来の不安、次々と押し寄せてくる感情を誰にぶちまけることもできない。徐々に学校へ行くのが嫌になった。部活を辞め、授業をサボり、日々内向的になっていく。教師や同級生たちには、さぞ愛想を尽かされていたことだろう。

やがて一人ぼっちに慣れていった。本を読み、山に登った。友達などいなくなったし、求めなくもなった。流行り廃りの激しい世論という突風の中で、山のようにどっしりとした自分の価値観を身に付けたいと思ったのだ。
「海も空も太陽も、そして野に咲く花さえも愛の形容詞となるのに、僕には飾り立てるべき愛という名詞が存在しない」と当時の日記には記されている。

20年近くの歳月が過ぎて気がついた。在りし日の僕の姿は、東アフリカで出会ったゲイ青年たちのそれにそっくりだったのだ。
(ふじもと・けいじ氏=写真家)
2017年2月17日 新聞掲載(第3177号)
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