風花雫 昨日まで友達だった通り魔は離れろと叫びながら刺した |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年2月17日

昨日まで友達だった通り魔は離れろと叫びながら刺した 
風花雫

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日本経済新聞二〇一七年一月十五日の「日経歌壇」穂村弘選歌欄に採用された一首である。読売新聞歌壇の俵万智、毎日新聞歌壇の加藤治郎、そして日経歌壇の穂村弘。一九八〇年代から九〇年代にかけての「ライトヴァース短歌」の運動を担った世代の歌人たちが新聞歌壇の選者をつとめ始めて以降、新聞に投稿される歌の雰囲気も少しずつ変わってきている。「新潮45」二〇一六年十二月号に寄せられた浅羽通明のルポ「嗚呼、新聞歌壇の人生」はそのあたりの状況を綴ったルポで面白いものだった。掲出歌のような、社会の不条理や暴力性をフィクションのかたちで表現する短歌が採用されるようになったのも新聞歌壇の変質の象徴である。一昔前だったら選ばれていないかもしれない。

何かのきっかけで通り魔へと変貌してしまった「友達」。しかし友人の姿を認めてわずかにかつての記憶を取り戻し、「離れろ、自分に近付くな!」と叫びながら、それでも暴力衝動に満ち満ちた身体を抑え切ることはできないままにこちらを刺してきたというストーリーラインだ。急に人格が豹変してしまう「友達」は、狂人だったのだろうか。それとも、全く別の存在に人格を乗っ取られてしまったのだろうか。もしかすると、自分に対してはその凶悪な素顔をそれまでひた隠していただけなのかもしれない。SF的な空想も含め、さまざまな想像を膨らませることのできる歌である。
2017年2月17日 新聞掲載(第3177号)
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