【横尾 忠則】創造と生命とアニミズム。 肉体消滅後の生き方、展望|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの向こう側 第262回
2016年10月21日

創造と生命とアニミズム。 肉体消滅後の生き方、展望

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金子兜太さんとご自宅にて

2016.10.10
 体育の日だって。いつも頭の体操をしているけれど、脳味噌には筋肉がつくどころか骨皮筋衛門だ。

終日東京新聞の「この道」の原稿を書く。時系列に従がって、テーマを決めて書いているけれど小説家みたいに翌日に期待を持たせるような芸当はできない。

アトリエの帰路。今日は休日だから事務所のツートンとパソコの様子を見に行くが、姿がない。一体どこに消えてしまったのだろう?
2016.10.11
 事務所の徳永と国道を歩いていると前方から自転車に乗った男が走ってきて、あわやぶつかりそーになった。その男は「危ない!」と叫んだが、再び踵を返して戻ってきた。彼が怒る前に先手を打って、「どーもスミマセンね」と謝ったが、そのことには無頓着で、ポケットから紙切れを出して見せた。そこにはLPプレイヤーとその機種の番号が記されていて、「今日はこれを買おうと思っているんだ」と言った。「ヘエー!シンクロニシティだね」と「ぼくも今日これと同じプレイヤーを東京都現代美術館のミュージアムショップで買うんだよ」と男に言って周囲を見廻すといつの間にか神社の境内みたいなところに立っていた。

近々、対談やトークが4本も入っているので、補聴器を装着しないと会話がなりたたないので、東京ヒアリングケアセンターから補聴器を持ってきてもらう。長い間補聴器を使用しないまま生活していたが、逆に悪くなる一方だ。やはり付けた方が聴こえはいいが、環境音も同時に拾ってしまうのでうるさいといえばうるさい。脳が慣れるまで少し時間がかかるというが、脳が自分なのか、自分だと思っている自分が本当の自分なのかよく分らない。

山田さんがサプライズ来訪。進行中の映画のタイトルバックの構想プランを話す。

階段から洋服ダンスの上をテリトリィにしていたおでんが半年振りにぼくのベッドルームに入ってきた。借りてきた猫みたいな顔をして、ヌッと入ってきた。
2016.10.12
 『死なないつもり』(ポプラ新書)の題名の意味は大してないと思うんだけれど、あえて説明するなら、人間は死ななくできており、長寿時代と無関係に肉体の消滅後の生き方を考える長期的展望が必要でそれを今ヤルということ。

午前中、東京新聞の瀬戸内さんの連載エッセイの挿絵に岸朝子氏の肖像画を描く。

国立東京医療センターの野田眼科医の定期検査に。先生に内緒で2ヶ月間薬を飲まなかった。結果を心配していたが、それが前回より良くなっているそうだ。飲まなかったことを白状すると、体力がついてきたので自然治癒が効果を発揮したのでしょうと診断される。

今年度の高松宮殿下記念世界文化賞の絵画部門がシンディ・シャーマンに決まり、彼女が来日している。18日の授賞式には大勢の人の声が環境音として耳に強烈な刺激を与えるので欠席と日本美術協会の野津さんに連絡したら、シンディ・シャーマンからの伝言をメールしてくれた。
2016.10.13
 ソフトバンク出版の対談集のために金子兜太さんの埼玉のお宅を訪ねる。創造がなぜ寿命を延ばすのか、というようなテーマで色々話を聞いた。創造と生命にアニミズムが大きく関わっているという話がとても面白く、97歳の俳人と意気投合。もう少し近ければ度々会って話をしたいものだ。

村上春樹ではなくボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞した。ぼくは彼の音楽は好きだが詩は読んだことがないので、何を歌っているのかよくわからないが、まさかの文学賞に文学者たちは何を思うのだろう。

文学の領域がポップスの詩まで統括したことは、コマーシャルアートがファインアートの最高賞(そんな賞はないけれど)をもらったようなものでHigh&Lowの境が文学の世界でも曖昧になったということかな。それにしてもディランの沈黙は何を意味しているのだろう。もしかしたら受賞拒否も考えられるよな。84年頃、彼からLPジャケットのデザインを依頼されたことがあったけれど、海外旅行に行く寸前で断ったことが、今、初めて残念だったなあと思える。
2016.10.14
 スイスのメゾン・ダイヤー美術館の「ポップアート、その愛」展の個展から帰ってきた神戸の山本さんが、カタログと資料やグッズを持って来訪。「横尾さんの代りにいい目にあってきました」と山本さん。海外旅行は体力が勝負だからこちらはもういい目に会うこともない。
2016.10.15
 やっと秋日和。暑いぐらい。公園のテラスでは眩くて本が読めない。自転車の子供が目の前で転倒。あれが大人だったら大ケガだ。
2016.10.16
 亡養父、亡実父が家にくる。住所を知らなくっても来れるんだ。

増田屋でワダエミさんに会う。北京のテレビ映画の衣装を担当しておられるそうだ。中国と比較にならないほど日本政府の文化度のレベルの低さにあきれていると。物質経済主義国家は必然的に文化後進国になる運命から逃れられないんじゃないの。(よこお・ただのり氏=美術家)
2016年10月21日 新聞掲載(第3161号)
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