外山恒一「百回休み」(2005) 彼女とかいない時逮捕されたからいまひとつこう盛り上がらない |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
2017年2月24日

彼女とかいない時逮捕されたからいまひとつこう盛り上がらない 
外山恒一「百回休み」(2005)

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外山恒一というのは知る人ぞ知る名前だろう。十代の頃から反管理教育の「極左」として活動し、逮捕服役を経験後は「ファシスト」を自称して二〇〇七年の東京都知事選で「諸君、この国は最悪だ!」「今はただスクラップ&スクラップ!」「外山恒一にやけっぱちの一票を!」ととんでもない政見放送をNHKの電波に乗せてみせた人物である。今見返してみても十分笑える。

その外山恒一、実は二〇〇五年の角川短歌賞に応募し、応募総数624篇のうちの上位33篇に入って最終選考を通過しているのである。その応募作品「百回休み」は、自身のブログにて自註付きで一部公開している。短歌を詠んでみたきっかけは、「週刊SPA!」の「若者に短歌がブーム」という記事で紹介されていた佐藤真由美の短歌に触れたことらしい。初投稿で最終選考通過というのはかなり才能がある部類といっていい。

「百回休み」は二〇〇二年に名誉毀損罪で逮捕されて服役した経験をもとにしているが、乾いた口語で表現されるあっけらかんとしたユーモアがなかなか面白い。掲出歌にしても「せめて彼女がいる時に逮捕されてたら悲劇的な別れとか面会室でガラス越しに手を合わせるとかロマンティックなことできるのになー」なんて考えていて、からっと明るい。後の政見放送パフォーマンスで見せてくれた、絶望と諦めをくるっと一周したところに現れる笑いのセンスは、短歌を詠むときにも活かされていたのである。
2017年2月24日 新聞掲載(第3178号)
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