【横尾 忠則】人生の第二ステージは、理 外の理が手ぐすね引いて。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
2017年2月24日

人生の第二ステージは、理 外の理が手ぐすね引いて。

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2017.2.13
 椎根和君は70半ばでぼくとそう変らない年齢の60年代の「平凡パンチ」時代からの担当編集者で、ぼくの難聴を気づかってわざわざ鎌倉から電話機の受話音量が大きくなる器具を届けてプレゼントしてくれる。彼も難聴で補聴器装着者だ。最近のぼくは電話での会話もままならずトンチンカンな会話で相手をとまどわせている。この間なんか、ある人に電話したものの、サイボーグのような声が戻ってきたので「あなた、どなたでしょうか?」と問うと相手も「あなたこそどなたでしょうか?」と問うのだった。お店で買物をしたりするとレジの人が必ず何か話し掛けるのだけれどそれが何を言っているのかさっぱりわからないのだ。いかにも耳つんぼの爺さん風采に見えれば相手もそれなりに対応してくれるのだが、年相応に見てくれないので「この人、怪しい人では?」と不審者扱いの目で見られることが多い。

耳だけならまだしも、昔から顔不認識症のケがあって、相手が知己であっても「誰?」となる。今日も増田屋で会った人から挨拶されたが、その人が加山雄三さんであることを認識するのに数秒かかってしまい、その場であわてて、取りつくろおうとするのでトンチンカンなことを話してしまう。こんなことは日常茶飯事に起っていて、人生の第二ステージは理外の理が手ぐすねを引いて待っている感じだ。

2017.2.14
 作品社の渡辺さん来訪。彼は青土社時代に拙著『言葉を離れる』を単行本化してくれた編集者でその後作品社に移り、「うちでもぜひ一冊」と新しい企画を提案される。

徳永が突然ノロウイルスで倒れる。身内が三人も倒れ、ジワジワと包囲網が縮まってきて、一番ヤバイぼくに異常がないのが異常だ。

「文藝春秋」が安楽死、尊厳死をテーマに、賛成・反対のアンケートを60人に取った結果56人が賛成。反対はたった4人。その4人の一人が私であります。他の3人とは上野千鶴子、篠沢秀夫、外山滋比古の諸氏。

2017.2.15
 高橋鮎生君と横美の平林さんがぼくのLPのコレクションざっと2000点の分類作業を地下で。60年代、ニューヨークに行く度にまだ小学生だった彼はロックコンサートに同行したり、新しいロックの情報を仕入れてきて教えてくれるのだが、そんなロック少年が今や作曲家で、ギタリストでもある。平林さんのキュレーションで「横尾忠則ワールド・ツアー」展を神戸で準備中。乗りのりの平林さんはツアー用のTシャツをと、メーカーの北村さんをデザイナーの中嶋さんが紹介。

写真家の吉田大朋さん死去。頑丈な人だったのに。

2017.2.16
 難聴の特効薬だという食品の作り方を指導する人の講習を受ける。蝉を巻寿司ののり代りにすると言って、蝉をズラッと縦に並べて、カリフォルニア・ロールみたいな見た目にも気持ちの悪いモノを実演して見せるが、こんなゲテ物を食う人間などいるもんか、という夢を見る。

妻もかなり回復した模様で、ぼくの着替えなど知らぬ内に洗濯してくれているので、もうひと息だ。おでんは人間のインフルエンザもノロウイルスも関係ないのか家の中を元気に走り廻っているか、ぼくの寝室で寝ているかのどっちかで、父娘二人暮しって感じがする。

徳永のノロウイルスが治り、今日から出てきている。

厄払いにぼくは美容院ピカ☆ビアへ。
保坂和志さん、磯﨑憲一郎さんと(撮影・岩本太一)

2017.2.17
 「文藝」の連載鼎談で保坂和志さん磯﨑憲一郎さん来訪。お互いの近況報告から始まって、あとは猫のこと、文学のこと、美術のことなど中味のない役立たずの四方山噺が延々5時間、いわゆる黒住教の宗忠神のアホになるための修業でもある。

2017.2.18
 100メートル道路の左右に大きな看板のような絵画が立てかけてある。若いアーティストの作品のようだが、ぼくにない色彩感覚は新鮮だ。この絵の前を行ったり来たりする同じ夢を一晩に二度見る。
「今晩何が食べたい?」と妻が聞くほどに回復したようだが、今日一日ジッとしていた方がいいよ。

昨日、春一番、今日冬一番再到来。

『不思議の国のアリス』をそのままギュッと凝縮した『子ども部屋のアリス』があることを知った。最後はやっぱり夢から目が覚めるアリスだが、ぼくの反復作品みたいだと思う。

夜、整体へ。施術中ズーッと子供時代を回想。

2017.2.19
 石川次郎君と数人で横浜の南京街っぽい商店街を歩いている時、雑誌のグラビア写真にぼくの野球選手に扮した写真を彼が見せてくれる。一風変った写真で、撮られた意識はないがファッション系の女性カメラマンだという。帰りに彼女の働いているカメラ店に寄る。ただそれだけの別にわざわざ夢にするほどでもない夢を見る。最近の夢の質は低下してきた。

描けば描くほどエネルギーが内から放出される。久し振りに描きまくる。

今夜は13日振りでわが家の夕食にありつく。快気祝いに好物のカレー。
2017年2月24日 新聞掲載(第3178号)
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