田原総一朗の取材ノート「いまなぜ? 金正男氏殺害事件」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」

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田原総一朗の取材ノート
2017年3月3日

いまなぜ? 金正男氏殺害事件

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二月十三日に、マレーシアのクアラルンプール国際空港で、北朝鮮の首領である金正恩の異母兄・金正男が殺害された。衆人環視の空港で、白昼堂々、二人の外国人女性らによる毒殺というスパイ映画のような手口に世界中が仰天した。

金正男は北朝鮮の二代目の首領・金正日と女優だった成ケイ琳との間に生まれた長男で、ある時期までは後継者と目されていた。

だが、その後金正日は高英姫と結婚して金正哲や金正恩が生まれ、三男の金正恩が三代目の首領となったわけだ。

それにしても、金正男はなぜこの時期に殺害されたのか。暗殺犯は男女六人のグループで、主犯の男たちはマレーシアを脱出して北朝鮮に帰っているとみられている。となると殺害を命じたのは金正恩で、金正男が自分に取って代わるのを恐れたということなのだろうが、なぜ、政権が発足して五年もたった今、しかもスパイ映画のような派手な舞台設定をして殺害を世界中にアッピールしなければならなかったのか。

実は金正恩は政権二年目の一三年に叔父の張成沢を処刑している。張成沢は金正恩を全面支援していた。処刑の理由は国家転覆をはかったとされているが、北朝鮮の事情通たちは、軍部と対立し、軍部のストーリーに金正恩が乗せられたのだろうとみている。となると非常に猜疑心が強い、危なっかしい人物だ。

げんに『週刊朝日』三月三日号によれば、彼は二〇一二年に三人、一三年に約三〇人、一四年には約四〇人、一五年には約六〇人の幹部を粛清したという。粛清の数はどんどん増えている。一六年には、おそらくもっと増えているのだろうが、今年の一月には粛清する側のトップ、金元弘国家保衛相が解任され、次官級を含む同等幹部多数が処刑された。

もはや北朝鮮に金正恩にとって信用できる人物はおらず、彼はストレスの塊になっているはずだ。

私は金正恩自身が暗殺される危険性があるとみている。げんに中国は、北朝鮮との国境に大量の人民解放軍を派遣して、彼が暗殺されたときに北朝鮮を押え込む体制をとっているようだ。
2017年3月3日 新聞掲載(第3179号)
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