連続討議「文系学部解体―大学の未来3」室井尚・ハヤシザキカズヒコ なぜ誰も声を上げないのか/なぜ伝わらないのか?(8)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 連載
  3. 文系学部解体-大学の未来
  4. 連続討議「文系学部解体―大学の未来3」室井尚・ハヤシザキカズヒコ なぜ誰も声を上げないのか/なぜ伝わらないのか?(8)・・・
文系学部解体-大学の未来
2017年3月3日

連続討議「文系学部解体―大学の未来3」室井尚・ハヤシザキカズヒコ
なぜ誰も声を上げないのか/なぜ伝わらないのか?(8)

このエントリーをはてなブックマークに追加
大学に自由を取り戻すために出来ること

室井
前にも言ったけれど、僕たちは教員として、学生と過ごした時間は、自分にとってもプラスになると同時に、君らが将来活躍してくれれば、非常によかったなと思う。それは十年、あるいはもっと長い時間が経たないとわからないことです。こうした大学の機能を、どうやって世の中の人に理解してもらうか。それと、繰り返しになりますが、今大学で起こっていること。現状を知ってもらうのは、かなり難しいことだと思うんですね。つまり大学の問題について話し合いましょうと言っても、教員や職員の人ですら、考える余裕はない。法律が決まってしまったとしても、その法律の間違いを指摘すればいいと、ハヤシザキさんはおっしゃるけれども、官僚的なやり方で、どんどん法制化が進み、様々なことが大学に押し付けられて来るわけです。FD(ファカルティ・ディベロップメント)やエクセル等による書類作りであったり、次々と規則を作り、みんなそこから逃れられないようになっている。そうした中で、がんじがらめになっていく。こんな状況に対して、たとえ「大学が大変なことになっている」と言ったとしても、「会社はもっと大変ですよ」と反論されるだけです。もちろんブラック企業化が進んでいるのはわかるし、社会全体が失速していっているのもわかる。その時に、我々ができることは何か。ハヤシザキさんが言われたように、大学の中にもう一度自由を取り戻すために声を上げていく。好きなことを言える場所を守っていくということです。ハヤシザキさんのもうひとつの問題、炎上事件については、若い人の目から見て、どう思いますか。
三浦
このぐらいのことで炎上するのか、くだらないなというのが正直な感想です。学生はむしろ炎上をおもしろがっているんですが、それが別な方向に広がっていくことの気持ち悪さを感じますね。
室井
本当に気持ち悪い。最近も事件になったけれど、武蔵野大学の先生の発言に対して、大学当局が「不適切な発言があった」と釈明する事態がありましたね。残業時間が百時間超えて、自殺した女性がいた。その程度で自殺するのは根性が足りないみたいなことを言ったら、炎上して、大学に抗議の電話が押し寄せた。それに対して大学が、「SNSの使い方の指針にも反している」と発表した。僕も以前、抗議を受けたことがあるんですよ。『タバコ狩り』を書いた時、「受動喫煙の害を否定している、とんでもない教員を雇っていることに対して、どう思うのか」と、大学宛てにがんがん文句が来るわけです。そういうクレーマーに対して、「教員が個人で言っていることです」という言い訳が、最早通用しない。結局のところ、学長のガバナンス強化というのは、そういうことに繋がって来ることなんです。教員がやっていることは、学長が全部責任を取れというところがある。その辺りが、実に息苦しい。ただ、この点に関して、ハヤシザキさんの話を聞いていて思ったのは、学長や執行部の立場だったらどうしただろうかということです。「偏向教育を許していいのか」「大学はどう思っているんだ」と抗議が来た時、「大学としては何の問題もないと思います」と毅然として言ったら、今度は「大学自体が偏向している。偏向学長だ」と言われる可能性もある。かと言って、担当部署の機械的な説明だと、向こうは納得しない。慶應大学のサークルが起こした事件だって、そうですね。大学は全然悪くない。それを、みんなが寄ってたかって非難する。そうすると危機管理専門家だとか、謝り方を教えるコンサルタントが出て来て、謝罪会見に対して点数を付けたりする。そんな状況を前にして、大学も、何か事件が起きた時のために、マニュアル作りを進める。もちろんハヤシザキさんのケースは酷い話だと思いますよ。あの程度のことで教員を処分する。「懲役三ヶ月」なんてもってのほかです。だけど、僕が逆の立場になった時に、どういう対応ができるのか。難しい問題ですよね。 (つづく)

2017年3月3日 新聞掲載(第3179号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ハヤシザキカズヒコ 氏の関連記事
室井 尚 氏の関連記事
文系学部解体-大学の未来のその他の記事
文系学部解体-大学の未来をもっと見る >
教育・子ども > 教育一般関連記事
教育一般の関連記事をもっと見る >