Forget-me-not➉|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
読書人よ、集まれ!

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは

  1. 読書人トップ
  2. 連載
  3. Forget-me-not
  4. Forget-me-not➉・・・
Forget-me-not
2017年3月10日

Forget-me-not➉

このエントリーをはてなブックマークに追加
母が買い物に行っている間、ウガンダの首都・カンパラ郊外の自宅で
ゲイの出会い系アプリを使ってボーイフレンドを探す
専門学校生のフランシス(19)
ⒸKeiji fujimoto
車外にはカンパラ郊外の風景が広がっている。移りゆく家々から視線を戻した僕は「どんな子どもだったの?」と隣に座るフランシスに尋ねた。青年の繊細な心は一体どの様に育まれたのか興味があったのだ。

彼がまだ幼かった頃、父親が女をつくり両親が離婚した。その後、母は自身のHIV感染を知った。幸い兄や姉は無事だったが、末っ子のフランシスからはHIVウイルスが確認された。突然訪れた苦難に心乱された母子ではあったが、熱心に教会に通い続けることで次第に心を落ち着けていくことができたのだという。

「大変そうな母にそれ以上の苦労をかけたくなかったから、幼い頃から母の前ではいつも気丈に振る舞う癖がついていたのかな」などと話すフランシスだったから、思春期にゲイだと気がついた時にも母には勘付かれない様に細心の注意を払っていた。

住宅街から畑へと周囲の風景は変化していき、車はデコボコ道をひた走る。

「厳しい状況に置かれたことは大変だったけれど、弱い人の気持ちがわかる様になれたことは本当に良かった。将来はウェブデザイナーになって母を安心させてあげたいんだ」

改めてフランシスの顔を見つめる。今そこにあるのは、揺れながらも現実を静かに見つめる心優しき青年の表情だった。

2017年3月10日 新聞掲載(第3180号)
このエントリーをはてなブックマークに追加
藤元 敬二 氏の関連記事
Forget-me-notのその他の記事
Forget-me-notをもっと見る >
文化・サブカル > ジェンダー関連記事
ジェンダーの関連記事をもっと見る >