完訳エミリ・ディキンスン詩集(フランクリン版)
著 者:新倉俊一監訳、東雄一郎・小泉由美子・江田孝臣・朝比奈緑訳
出版社:金星堂

完訳エミリ・ディキンスン詩集(フランクリン版)



 いまやアメリカ合衆国最大の詩人とされるエミリ・ディキンスン(一八三〇~八六年)の完訳詩集。従来、ほとんどの翻訳が旧いジョンソン版(一九五五年刊)を基にしていた。本書は、新世紀のテクストとして急速に普及したフランクリン版(一九九九年刊)を底本とする。制作年ごとに全一七八九篇を収録。ディキンスンの詩的成熟のプロセスをつぶさにたどることが可能。傑作の大半が一八六〇年代前半の南北戦争時代に書かれた。これは偶然ではない。同胞どうしの殺し合いに心を痛めながら、ディキンスンもまた生家二階の自室で、孤独な内なる「戦い」に従事していたのだ。詩人としての才能と使命を自覚し、すべてを詩に捧げたその生き方は悲壮とも言える。一方で、ウィットとユーモアに満ちた軽妙な作品も少なくない。謎めいた詩も多く、読者の新解釈を待っている。説明的な訳を排して、原詩に忠実な直訳調を心がけた。原詩と対照して読む読者のために巻末に「原詩初行一覧」を付した(ジョンソン版にも対応)。 筆者=江田孝臣 (A5判・五五四頁・本体五、〇〇〇円)

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