第47回 大宅壮一ノンフィクション賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年7月8日 / 新聞掲載日:2016年7月8日(第3147号)

第47回 大宅壮一ノンフィクション賞 贈呈式開催

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児玉博氏と堀川惠子氏
6月24日、第47回大宅壮一ノンフィクション賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が有楽町・日本外国特派員協会で開催された。受賞作は、書籍部門が堀川惠子氏『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』(文藝春秋)、雑誌部門が児玉博氏「堤清二『最後の肉声』」(文藝春秋15年4~6月号)。

賞の贈呈に続き、書籍部門選考委員の梯久美子氏、雑誌部門選考委員の後藤正治氏による祝辞が述べられたのち受賞の言葉で、堀川惠子氏は「人の命は地球よりも重いという有名な言葉がある。昔、私はこの言葉を聞いたときにまったくこの言葉の重さを自分の中で受けとめる事ができなかったが、いま考えてみると、この判決が出たのが昭和23年。僅か3年前には人の命は一銭五厘と言われた時代だった。多くの方が心の中に命の重みを自然に受けとめていた、そういう時代にあの裁判官の言葉は書かれたのだと思う。翻ってこの命という問題を自分の手の中に持ったときに、例えば自分の家族、愛する人、大切な人を失うということがいかに大きなことであるか、自分の人生が狂わされるほど大変なことである。その命という問題が戦争の枠組みに入った途端ものすごく軽くなってしまう。何千万何百万という方が亡くなってもその死は正当化され、泣く事も許されない、単なる乾いた数字になってしまう。そのことに思いをいたしたときに私は自分の故郷の原爆という問題にとことん向き合ってみようと思った。広島の平和公園に原爆供養塔がある。オバマ大統領が訪れた慰霊碑にはたいへん注目が集まったが、そこから北へ100mほど離れたところに小さな土饅頭と呼ばれるお椀を伏せたような塚があってそこに七万のご遺骨が眠っている。遺骨といってもピンとこないが、実はこれはみんな殺された人たちであるということに思いをいたしたときに、徹底的に彼らの来た道、そして70年間なぜそこに置き去りにされているのかということに向き合おうと思い、取材を進めた。取材というのは例えればロッククライミングのようなものだ思っていて、つるつるの何もないところに爪を立てる事、昇る事はできないがそこには必ず何か足掛かり、手掛かりがある。それは何かといえば多くの被爆者の方の証言であったり書き残された記録であったり、先人たちジャーナリストの方々が残された小さな記事だったり、そういう積み重ねによって私は取材を遂行できている。そのことを深く痛感した取材であった。国会図書館で原爆供養塔というキーワードを打ち込むと何が出てくるか、ゼロ件である。タイトルでもキーワードでもヒットしない、そういうものがこの世にあるのかと思い驚いた。でも地元を歩けば宝物のようなたくさんの遺品や亡くなった方の言葉、何より供養塔を人生を捧げて守ってこられた佐伯敏子さんという方がおられたり、そういう方々が70年間必死に繋いできてくださった思いを、たまたま最後にアンカーとして受けとめて本にすることができたというのがこの取材であった。明日からはまた全てを捨てて次の作品に挑んでまいりたい」と話した。

児玉博氏は、「今回の作品は不思議な事が連続的にあり、何か見えざる力の御手引きによって出来たような作品だった。当初、堤清二氏が私にくれたインタビューの時間は一回一時間だったが、結果的には七回十数時間にわたってインタビューに応じてくれたことは今でも奇跡だと思っている。その長いインタビューを通じてまったく予想外であったが、父を語り、母を語り、親族を語り、自ら背負うことになった運命を語り、人間にとって業とは何かを語ってくれた。特に父については、父に一番愛されていたのは自分なのだと、私に何度も訴えた。85歳の老人がさながら赤子のように愛をまさぐる姿はある種狂気でもあり、ある種哀れな姿でもあった。その意味では彼は背負わなければならなかった運命と闘い、業と闘った人生をまっとうしたのだと思う。母が違う弟・義明氏もやはり運命と戦った一人なのだと思った。その運命や業の中においては人間の良し悪し、ましてや善悪はなかったのだろうと思う。初めてこのような賞を授けていただき、多くの方々が我がことのように喜んでくれた。その笑顔が本当に嬉しくてそれが次へ進む力になると改めて教わった。もっと喜んでもらえる作品を世に問うていくために、スコップとつるはしを担いでノンフィクションの鉱脈を掘り当てる旅に出たいと思う」と語った。

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