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Forget-me-not
更新日:2017年4月11日 / 新聞掲載日:2017年4月7日(第3184号)

Forget-me-not⑭

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ウガンダの首都・カンパラで開催された女装コンテストで踊るケルトン(22)。ⒸKeiji fujimoto
カラフルな照明、赤い絨毯、ずらりと並ぶ審査員たち、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた観衆たち。毎年8月にカンパラで開催されている女装コンテストの一幕だ。壇上に立つ主催者が趣旨を説明している舞台裏では、トランスのケルトンが他の出演者たちに混じりメイクを施していた。

「私みたいな社会不適応者にはろくな男なんて寄って来ないの。もっといろいろ知りたきゃ、今日みんなが帰った後までここに残っているといいわ」

上体を後ろに反らしたケルトンがはだけた広い胸の前で腕を組む。その下には「いつかは手術で取り除きたい」という男性器の形が黒いタイツに生々しく浮かび上がっていた。

その夜、女装家やトランス達は舞台上で舞い、歌い、演技をした。パーティーが幕を降ろした頃には時計の針は夜中の一時をまわっていた。

既に照明は消え、絨毯もぐちゃぐちゃ、審査員や観衆たちの姿はなくなっていた。たしかにケルトンは準グランプリを勝ち取りはした。そして周囲もたとえそれが一時であろうと賞賛した。しかし最後まで粘り強く彼女の元に残っていたのは、上物のトランスと寝ることに興味のあるオヤジと僕だけになっていた。

「だからね」ケルトンが続ける。「ここから抜け出すことはできないの」
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