日本料理とは何か 書評|奥村 彪生(農山漁村文化協会)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年7月15日 / 新聞掲載日:2016年7月15日(第3148号)

日本料理とは何か 書評
著者ならではの「和食文化史」 定説では見られない解釈を大胆に提示

日本料理とは何か
出版社:農山漁村文化協会
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本書は、最近多く見られる「和食」の本の中でも大著で、実に六〇六頁ある。和食文化の源流を縄文時代から現代の課題まで著者特有の構成、展開で記された和食文化史である。その構成は、第一部日本食文化の基層と源流、第二部日本料理の成立と展開、第三部年中行事で花開く日本料理からなり、それぞれに章が設けられている。第一部は、日本の自然環境、縄文時代のアク抜き技術、米が常食となる経緯、日本食文化の源流が中国食文化にあることなどを主題にしている。第二部はこの書の中心部分で、古代食文化、中国の精進料理の影響、だし文化、京都料理、江戸の庶民の食生活、刺身、すし、てんぷらなど現在に継承されている食文化の起源から説き起こしている。第三部は正月行事に絞ってその由来にもふれている。

著者は、伝承料理研究家で文献による研究に加え、それを再現して具体的説明を加えることも多く、本書の多くの部分でも両面から語っている。また、世界各国を訪問した経験から、日本の食文化との違いや共通性も指摘しており、著者ならではの「和食」解釈が特徴ともいえる。

伝来した精進料理が、懐石料理などに影響したことはすでに定説となっているが、本書では、さらに広げ、寺院の日記などの史料から「飯・味噌汁・鱠・焼物・煮物」の精進の本膳が室町時初期にあり、食材の広がり、調理法の発展、寒天、梅干し、そば切りに加え、鳥類、魚介類も寺院で多く使われていることで、精進料理の影響を「中国伝来の調菜文化が起こした第二次日本食文化大革命」と呼んで評価している。定説ではあまり見られない解釈を大胆に提示することで今後議論が広がる可能性が残されているともいえよう。

だし文化は日本独自ではなく、食材は異なるが世界に見られる。本書では中国の精進だしがもとであるとし、フランス、イタリアの例にもふれている。和食の特徴に必ずあげられるだしは、食材の特徴や油脂に頼らないことを明示する必要性を改めて確認できる。また昆布やかつお節だしがクローズアップされる中で、本書では野菜・大豆類などもだしとしてきた庶民の和食についてふれてあり、経験を通した著者ならではと納得できる。

調味に使う甘みについては、随所でふれている。和食の煮物、あえ物などの調味に砂糖を多く使うことが当たり前になっている現代に批判の目を向けている。歴史的にみれば、むしろ甘みをつけず素材の甘みを大事にしていたと思えるが、著者もこの点を指摘し、歴史的にもまた地域差のあることについても京都料理、かば焼きなどを通して記述している。

年中行事は、ユネスコに登録した正式名称「和食:日本人の伝統的な食文化―正月を例として―」が意識されたかどうかわからないが、正月の背景に神迎え、神人共食があること、料理の内容が変化しても神への祈りや願いについてはこれからも継承していくべき方向性が示されている。また、家庭の食生活の「復興」には、古いままを伝えるのではなく、現在の暮らしに合う伝え方が必要だと結んでおり、これらはユネスコに登録した「和食」文化継承の精神にもつながるものといえよう。

通読には時間を要すものの、堅い書物ではなく、史料は明確に示してあるが、著者らしい語り口で、経験も豊かに盛り込みながら記述されているためか、著者から直接話を聴いている感じで読み進むことができる書でもある。
この記事の中でご紹介した本
日本料理とは何か/農山漁村文化協会
日本料理とは何か
著 者:奥村 彪生
出版社:農山漁村文化協会
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