第23回 松本清張賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年7月15日 / 新聞掲載日:2016年7月15日(第3148号)

第23回 松本清張賞 贈呈式開催

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7月1日、東京都内のホテルで第23回松本清張賞の贈呈式が行われた。受賞作は蜂須賀敬明氏の『待ってよ』(贈呈式当日に文藝春秋より刊行)。
賞の贈呈ののち、選考委員代表の挨拶で角田光代氏は、「この作品は変わった小説で、人間は赤ちゃんで生まれてから老人になっていくのではなく、老人として生まれて年齢を重ねていくごとに赤ん坊に戻っていくという非常に奇天烈な話です。読み始めるとすぐに出産のシーンがあるのですが、それは墓場から老人を掘り起こすというものです。そのシーンを読んだ時、私はいま、まったく読んだことがないものを読んでいるという味わったことのない感覚を味わい、この作品に会えて良かったと感じました。新人賞の選考委員の嬉しい瞬間とはこういうことなのかと思いました。話が進むにつれてちょっとボロが出てくるところもあるのですが、そこに疑問を持たせる前になぎ倒すように話が進んでいくので、ものすごい熱量で書かれた小説なのだと思います。これからもきっと読んだことのないものをたくさん書いてくださる作家だと思います。次回作もその次もずっと楽しみにしています」と、期待の新人作家の誕生を祝った。

蜂須賀敬明氏
続いて受賞者の蜂須賀氏は挨拶で、「今年はドストエフスキーの『罪と罰』が発表されてからちょうど一五〇年だそうです。ドストエフスキー作品は19世紀に書かれたもので、しかもロシアが舞台だったりキリスト教の世界だとかで、21世紀のわれわれが住む世界とあまり関係ない物語が進んでいくのですが、いまだに読者を獲得し続けている稀有な例だと思います。ではなぜ『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』といった作品がいまだに読者を獲得できているかというと、おそらくドストエフスキーはロシアを軸に作品を書いていたとは思いますが、それ以上にまず人として物語に向き合ってきたからこそ、時代を越えても国境を越えても人に繋がる作品になっているのではないかなと僕は考えています。長く生きると経歴だとか役職だとか、人間が生まれたままの姿でいるのはどうしても難しくなってくるもので、どんどん自分が分裂していくような人生になっていくと思いますが、優れた物語は人を人間に戻してくれると僕は思っています。どのような国籍であれ時代であれ、人間であれば分かるものが描けている作品がずっと読者を獲得し続けていたのでしょう。僕もそういう作品を生み出せるようになれればいいなと思っています。偉大な方々が築いてきた境地に達するためには、ただひとつ書き続けることしかないと思っています。受賞でこれからより小説を集中して書ける環境が手に入ったことを何よりもまず嬉しく思っているのと同時に、これからも誠心誠意を尽くして小説を作ってまいります」と作家としての決意を述べた。
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