第三十回 三島由紀夫賞 山本周五郎賞 決定|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年5月26日 / 新聞掲載日:2017年5月26日(第3191号)

第三十回 三島由紀夫賞 山本周五郎賞 決定

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宮内氏、佐藤氏
5月16日、東京都内で第三十回三島由紀夫賞と山本周五郎賞の選考会が開かれ、三島賞には宮内悠介氏の『カブールの園』(文藝春秋)、山本賞には佐藤多佳子氏の『明るい夜に出かけて』(新潮社)に授賞が決定した。

記者会見では先に授賞が決まった山本賞の選考委員の荻原浩氏がまず会見し、「佐藤さんの作品は満場一致とは言えないが、反対される方はほぼおらず、だいたい皆さん好評価をされていた。最終的には佐藤さんの佐藤さんの他に、木下昌輝さんの『敵の名は、宮本武蔵』と相場英雄さんの『不発弾』が残ったのだが、当初から佐藤さんが全般的に評価が高く波瀾のようなものはなかった。佐藤さんは安定の文章力と安定した内容で、破綻もなくストーリーがすっきりときれいに纏まっていた点が高く評価されたと思う」と述べた。
続いて三島賞選考委員の平野啓一郎氏は「宮内さんの作品は一選考委員、一読者として感銘を受けた。一世、二世のような強烈な体験はないが、もっと複雑なかたちで差別の問題が体験の中にある日系三世とその母親との関係を物語の中心に描きながら、個人的な問題を超えた背景を探っていくと、差別の問題と向き合わざるをえず、その中で社会とどのように折り合いをつけるかということが、二次創作的な世界とそのオリジナルというような仕掛けを使ったりしながら非常に巧みに描かれている。それが作者のポテンシャルと作品の完成度が非常にいいバランスで調和していたと思う」と評価した上で、「実はどちらかと言うと評価が高かったのは、一緒に収録されている「半地下」のほうで、ある意味で現実の馬鹿馬鹿しさというか、トゥーマッチな状況が非常に巧みに織り交ぜられて描かれていた」と語った。
カブールの園(宮内 悠介)文藝春秋
カブールの園
宮内 悠介
文藝春秋
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受賞者会見で宮内氏は「私としては三島賞の候補にしていただいただけで、もう宝くじに当たったようなもので、それがさらに化けたということでただ恐れ入るばかりだ。評価してくださったことを感謝したい。その一方で奇妙な感じも持っていて、今回の「カブールの園」という表題作は、アメリカの日系人を描いたもので、日系人収容所とその後日系人たちが細々と書いていた、日本語による文学表現を扱っている。なので、今回真に受賞したのは誰かと問われたら、もしかしたら彼ら日系人なのかもしれないという、あたかも虚空に賞が与えられたような若干奇妙な思いもある」と受賞に対しての思いを話した。
佐藤氏は「結構マニアックな素材でクセのある文章で書いたので、賞の対象になるとは正直思っていなかったので、大変びっくりしているし、評価していただいたことを非常に嬉しく思っている。山本賞のノミネートは三回目になるので、三度目の正直になるか、二度あることは三度あるのどちらかと思っていたのが三度目の正直になった。山本賞は、位置づけとしてエンタテインメント、なおかつ文芸として非常に小説の完成度が高くないといただいけない賞であるということで、私は子どもの本もやっていて、あまり賞というものをそれほど意識せずに書いているのだが、結果として評価していただけたのは本当に嬉しいし、いただきたかった賞でもある」と受賞の喜びを語り、青春小説の書き手と言われることについて「若い人を書くのが好きで、そう言われることは大変嬉しいが、特にそこにテーマを求めているというわけではない。まだこれから先長い人生が待っている若い世代は、気持ちが大きく揺れ動く世代でもあり、そうした大きな心の揺れを描きながら、まだこの先続く長い時間をどう生きていくかというエネルギーや立場、考え方などをしっかり書くことで、どう頑張って生きていけるのかを偽りなく描きたいといつも考えている」と述べた。
この記事の中でご紹介した本
明るい夜に出かけて/新潮社
明るい夜に出かけて
著 者:佐藤 多佳子
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
カブールの園/文藝春秋
カブールの園
著 者:宮内 悠介
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
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