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誰も見ていないから 第7回
更新日:2016年7月22日 / 新聞掲載日:2016年7月22日(第3149号)

誰もみていないから ➆

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誰もみていないから ➆
<博多祇園山笠男絵図>―MATSURI―series
(鉛筆、油彩、キャンバス/27.3×16.0cm/2015年)ⒸShinji IharaⒸShinji Ihara

「博多祇園山笠男絵図」は普段描いている油絵とは大きく描き方を変えている。それは、西洋の画材で日本的なモチーフを絵に落とし込むための一手段でもあるが、2013年に行ったニューヨーク近代美術館でのポール・ゴーギャン展でみた「タヒチの女たち」の生き生きとした人々の描き方に魅せられたからかもしれない。ジュートの荒いキャンバスの上に力強い線と独自の色彩で描かれた人物表現に深く感銘したことを覚えている。

2010年から制作している“MATSURI”シリーズを描き始めた頃は、法被に締込み姿の勇壮な男衆を絵にしたいと軽い気持ちからだったが、華やかさだけではない祭りが持つ儚さや、受け継がれてきた伝統と歴史の深さに、継続的な取材と制作が必要であると現在もなお描き続けている。また、毎年の取材と合わせて帰省し、自身の故郷を顧みることで、原風景と記憶を思い起こし、それが新しい創作イメージへと繋がっている。

フィナーレである「追い山」が終わると祭りの余韻もほどなくして、仕事へ急ぐサラリーマンや学生たちが街を行き交い始める。その時、夢から現実に引き戻され、とてつもない寂しさと孤独感に襲われるが、その感覚も夏の熱い日差しに消し去られ、私はまたアトリエに戻っていくのだ。 (いはら・しんじ氏=画家)
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