第36回 新田次郎文学賞|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

受賞
更新日:2017年6月9日 / 新聞掲載日:2017年6月9日(第3193号)

第36回 新田次郎文学賞

このエントリーをはてなブックマークに追加
第三十六回新田次郎文学賞の授賞式が、五月三十一日、東京大手町のレベル21東京會舘で行われた。受賞は、原田マハ『リーチ先生』(集英社)。

選考委員を代表して阿刀田高氏は「原田さんの小説はどこかにミステリの要素があって、その面白さで読者を引っ張っていくところがある。美術史小説という言葉が適切か分りませんが、新しいジャンルの誕生に居合うことができたことをうれしく思っています」

原田氏は「私は長野県茅野市に在住していますが、四月中旬、高島城に行きたい気持ちになり初めて訪れました。いろいろトラブルがあった時期でしたが、満開の桜に迎えられ、許されたような、歓迎されるような気がしたのです。その翌日、旅先に受賞の一報が飛びこんできました。あとから調べたら、新田次郎先生は諏訪市のご出身で、高島城のすぐ近くに墓所があると。新田先生にこれからも思い切ってフィクションを書いていきなさいと、言っていただいたようでうれしく思いました。
リーチ先生(原田 マハ)集英社
リーチ先生
原田 マハ
集英社
  • オンライン書店で買う
私は主にアーティストや過去の美術の世界で起った出来事など、事実をフレームにしながら、その上にフィクションを構築する手法で、書かせていただいております。いつも書きながら不安があります。読者が、例えば主人公の沖亀乃介が本当にいると思ったらどうしよう、などと戸惑いながらフィクションを史実の中に埋め込む作業をコツコツしています。私はあえて、事実の線引きを小説の中に設けていません。私のフィクションを読んでくださった方が、アーティストやアートの歴史など何かに興味を持って、次のステップとして調べていただければいいな、と思うのです。小説を入口に、もっと広い世界に出て行っていただければ、と。フィクションとノンフィクションの境界線をマージナルにすることが、私の作風として、新田先生からお墨付きをもらえたような気がしています。

『リーチ先生』は、私が陶芸や工芸にずっと興味を持ち続け、地方を旅していたあるとき、バーナード・リーチの孫弟子のような方々にお目にかかったことから着想を得ました。バーナード・リーチは一〇〇年前に日本にやってきて、七〇年ぐらい前に日本各地を柳宗悦や濱田庄司らとともに、旅をしてまわりました。そのときに陶芸を学んだ方の孫にあたるような人々が、今も彼を尊敬をこめて「リーチ先生」と呼んでいる姿が大変印象に残り、こんな風に日本と世界を陶芸でつないだ芸術家の人生を追いかけたい。できることならば、私が彼の近くにいて、彼が作陶するときいっしょにその時間を過ごしたい、と。その思いを込めた主人公の沖亀乃介は、私の化身です。読者に最も身近な存在として、皆さんにもリーチ先生に寄り添う人生をフィクションの中で送っていただければと思って書きました。私もリーチ先生を追いかけながら、一つまた一つと、美術史小説を書き続けていきたいと思っています」と挨拶した。
この記事の中でご紹介した本
リーチ先生/集英社
リーチ先生
著 者:原田 マハ
出版社:集英社
以下のオンライン書店でご購入できます
このエントリーをはてなブックマークに追加
原田 マハ 氏の関連記事
受賞のその他の記事
受賞をもっと見る >
学問・人文 > 評論・文学研究関連記事
評論・文学研究の関連記事をもっと見る >