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更新日:2017年6月9日 / 新聞掲載日:2017年6月9日(第3193号)

群像新人文学賞 群像新人評論賞

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前列右から上原、李、川口、宮沢の受賞者。後列は大澤、熊野純彦、辻原、野崎歓、青山七恵、高橋源一郎の選考委員(敬称略)。
五月十二日、東京・護国寺の講談社で、第六〇回群像新人文学賞と、群像新人評論賞の優秀作受賞者への賞の贈呈式が行われた(今回は両賞とも受賞作なし)。文学賞は上原智美氏の「天袋」と李琴峯氏の「独舞」、評論賞は川口好美氏の「不幸と共存―シモーヌ・ヴェイユ試論」と宮沢隆義氏の「新たな「方法論序説」へ―大江健三郎をめぐって」が選ばれた。

選考委員挨拶で文学賞選考委員の辻原登氏は「上原さんの作品は、〈わたし〉が以前住んでいた部屋に忍び込んで、いまの住人の亜美という女性にも気づかれぬまま天袋に住むというもので、暮らすうちに部屋が〈わたし〉の内側に裏返って移行し、覗きという行為の狂気がどんどん肥大化することで、亜美が知らないままもう一人の〈わたし〉になるという流れだった。こうした重なり、移行が一番大事なモチーフだと思う。選考ではラストの後味が悪すぎるという意見も出たが、読み直してみると気付かなかった作者の意図に納得もして、いま選考をやれば当選作に推していたかもしれない。

李さんの作品は、台湾人の女性で性的少数者の主人公に無数の試練が降り掛かってくるもので、流れの全体としては死に向かっているのだが、別のベクトルでは一種の起死回生を狙った書きぶりが感じられた。まとめると死と再生の文学、マイノリティ文学、あるいはコメディとも読めるのだが、やはり日本語と漢語を繋ぐことがこの小説のテーマの一つではないか。リービ英雄さんの仕事を横目に見ながら、李さんの作品を読み直すと、漢語圏から出てきた日本語の本格的な作家であり、根源的な問題に触れている可能性があると感じた」と評した。

評論賞選考委員の大澤真幸氏は「二人とも非常に難しいテーマで、川口さんの評論は、テーマとするシモーヌ・ヴェイユほど日本人が論じて難しい思想家はいないんじゃないかというほどなのだが読ませるものだった。宮沢さんの方は逆に大江健三郎なので、日本の伝統文学そのものに入っているわけなのだが、これほど重要な作家でありながら全体的に論じられることはあまりなかった。それをコギトというデカルトの『方法序説』の視角から読み取ってみようという野心にすごく惹かれるものがあった。二人は今回優秀賞というかたちではあるが、この二つを選べたことは僕としては嬉しいことだった。これは無理やり授賞したのではなく、選考委員の中ではっきりと一致したことでもあって、二人の作品が目立っていて、明らかに他のものより優れていると思えたからだ。お二人はこれを機会にさらに注目もされるし大きな仕事もされると思うが、批評の意味を考えながら仕事をしていただければ、私どもとしては選んだかいがあったと思っている」と話した。
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