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漢字点心
更新日:2017年6月27日 / 新聞掲載日:2017年6月23日(第3195号)

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沢木耕太郎『深夜特急』に、こんな場面がある。バンコク駅前のマーケットで、麺をすする主人公。塩気を足したいと感じて、華僑の主人に筆談を試みる。「塩」と書いたが、伝わらない。この字は日本の新字体だから、バンコクの親父が知っているわけはないのだ。「塩」の旧字体がわからず困った主人公は、「白」「辛」と続けて書いてみた。すると、めでたく塩が出てきたのである。

漢字とは便利なもの、というエピソードだが、同時に、よく通じたなあ、という思いもする。「辛」は舌を刺すような味を表す漢字で、塩の「からさ」とは異なる。「白」「辛」と書いたら、白コショウを出されてもしかたない。それでも通じてしまうところが、旅人ならではということだろうか。

「しおからい」ことをきちんと伝えたいならば、「鹹(カン)」を書かねばならぬ。もっとも、こんな漢字を知っているくらいならば、「塩」の旧字体「鹽」だって、知っていておかしくはないのだけれど……。
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