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更新日:2017年7月25日 / 新聞掲載日:2017年7月21日(第3199号)

日本ヴォーグ社代表取締役社長・瀨戸信昭さん(下)

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瀨戸信昭さん、キルト作品の前で
日本ヴォーグ社が社屋を市ヶ谷から中野富士見町に移したのは、今年五月のこと。代表取締役社長の瀨戸信昭さんは、新社屋を作るにあたって二年の歳月をかけ、建物の内部をほとんどリノベーションした。

伺ってまず驚いたのが、ビルの外観、内観さまざまな場所に緑が多いこと。取材した日は梅雨の晴れ間のとても日差しが強い日だったが、樹木に囲まれた建物は落ち着ける雰囲気で、日差しも柔らかくさえぎってくれる。屋上に上がると、大きな鉢には水が張られ、さまざまな水中植物が見られる。思わず「瀨戸さんが樹木やガーデニングに興味があるとは、初めて知りました」と声を挙げたほどだった。

もう一つ目を引くのが大きなキルトを展示する“ギャラリー”と呼ばれるスペース。その広いこと!
「以前、東京国際フォーラムのこけら落としに“キルトフェスティバル”を単独で開催した時、キルト作品の見え方が催事場や百貨店と全く違っていた。お客さんがとても喜んでくれたんです。あの時に、見せる器って大事だなぁとつくづく思いました。今回も物件を見るにあたって、ギャラリーが作れる建物はないか、というのが優先課題だったんです」

どうやら瀨戸さんは、新社屋をいろいろな人たちが足しげく通ってくれる場所として考えているようだ。人を惹きつけるポイントを「これでもか、これでもか!」と私たちに投げかけてくる。

手づくり業界も、ネットが出現してからは大きな転換期に来ている。若いお母さんたちに手づくりする時間がないし、六〇代以上の人たちの過ごし方は非常に多様化している。家でゆっくり手仕事をしたいという人もいれば、旅行やスポーツクラブなど、アクティブなことに興味を持ち、それに費やす時間もお金もある。「二十四時間をどう消費するかだから、すべてがライバル」だと瀨戸さんはいう。

新社屋に移ってからは、組織の在り方も大きく変えた。ニット、刺繍、押し花、グラスアートなど部門を八つに分け、出版、営業、ワークショップ、イベントなど、その部門にまつわるすべてのことを一つのチームで完結させる。出版は一つの手段ではあるけれど、日本ヴォーグ社を出版社として位置付けてはいないともいう。
新社屋の目玉となった広々としたギャラリー
瀨戸さんの仕事を見ていて、いつも感心することがある。それは日本ヴォーグ社の刊行物すべての最終ページに「あなたに感謝しております」という社長からのメッセージが書かれていること。編集長のメッセージは私もさんざん書いてきたが、社長からのメッセージが、それも年間一〇〇冊余り、発行するすべての本に書かれているということは、何を意味するのだろうか?「時々このメッセージには読者から手紙が来ますよ。すぐに返事を書きますけどね」

出版は手段の一つだという瀨戸さん。読者との信頼関係が出版の今後を大きく左右するだろうと考えている私には、瀨戸さんのメッセージは信頼の原点のように思えてならない。

「今後は会社を強くしたい。ちょっとしたことでは揺るがない。一人一人の社員がマルチで力を発揮できる。先生からもお客さんからも支持される、そんな会社を目指したい」

うらやましい限りだが、新社屋にはカフェもあって、夜になればグラスを傾けながら、さまざまなコミュニケーションがとられるという。「今日も社員とのトーク(十九日)の会。偶数月は管理職、奇数月はその月と翌月の誕生日の社員。胸襟を開いていろいろ話そうじゃないかという趣旨なんです」

二〇代、三〇代のころ、これでいいのか、これが自分の仕事でいいのか――。そんな自問自答を繰り返し、四〇代、五〇代。そして六〇代の今。ますます多忙を極めながら、新しい器を得て、新しいチャレンジを社員たちと考える日々。「ストレス解消法はゴルフですか?」と尋ねると、「ゴルフは下手になるいっぽうだから、ストレス解消にはなっていない。気分転換にはなるけどね」(おわり)
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