第一五七回 芥川賞・直木賞 受賞作決定|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年7月28日 / 新聞掲載日:2017年7月28日(第3200号)

第一五七回 芥川賞・直木賞 受賞作決定

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7月19日、東京都内で第一五七回芥川賞と直木賞の選考会が行われ、芥川賞は沼田真佑氏の「影裏」(文學界5月号)、直木賞は佐藤正午氏の『月の満ち欠け』(岩波書店)への授賞が決定した。
影裏(沼田 真佑)文藝春秋
影裏
沼田 真佑
文藝春秋
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 選考経過についての報告で、芥川賞選考委員の髙樹のぶ子氏は、「今回はほとんどケンカ状態のような大変な対立となった。受賞作は最初から過半数を超える得点を取っていたが、いろんな要素に対して賛否があった。例えば私の意見では、この作品は3・11の大震災を踏まえて個人の内部の崩壊を描いていて、大震災を小説にするにはこのようなかたちしかないのではないかと思い強く推したのだが、そもそもここで3・11は必要ないという強力な意見もあった。
また主人公が性的マイノリティであることが途中で分かるのだが、私はもっと大きいテーマに比してそのことはさほど大きな問題ではないと思ったのだが、そう思わなかった選考委員も非常に多く、この点でも対立を生んだ。技巧的である点についても、これを良しとする意見と、だから駄目だという意見があったりと、同じような要素は認めながらそれぞれに賛否が出た。同じく次点となった今村夏子氏の『星の子』についても非常に意見の対立があった。いずれにしても私もかなり長く選考委員をしているが、こんなに疲れた大変なバトルは初めてで本当に疲れ切っている。対立したところでちょっと私も感情的になった部分もあったので反省してはいるが、これは芥川賞にとってはやむを得ないバトルだったと思う」と、受賞作を世に出すために激しい議論が交わされたことを明かした。
月の満ち欠け(佐藤 正午)岩波書店
月の満ち欠け
佐藤 正午
岩波書店
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一方で直木賞は大きな意見の対立もなかったようで、選考委員の北方謙三氏は「佐藤さんの作品は全般的には好意的な意見が多かった。私とほとんど変わらない時期にデビューされた方なので、そういう方を選考するのかと思ったのだが、文章がまだみずみずしさを失っていない魅力的ないい文章だった。また文章の力が候補作の中でも抜きん出ていて、それがすべてを制圧して受賞作ということになり、決選投票もなかった。30数年間のキャリアというのは大変なことで、私なども頭がさがるところがあって、よくぞここまで書き続けてこられたと敬意を表したい」と、比較的すんなり決定したことを説明した。
沼田 真佑氏
受賞者の会見では芥川賞を受賞した沼田氏は、受賞の感想を聞かれて「光栄ではあるが、やはりまだ一作しか書いていないので、一本しか持っていないのにベストジーニスト賞をいただいたような気持ちだ」と説明して笑いを誘った。
選考会で激論になったことについて質問されると「どのような意見もそのとおりなのだろうと思うので、いずれもありがたいと思う」と話し、震災を描いたことについては「他のものを書きたくても、震災について書かないと他のものを書いても軽薄になるという思いで書いた。
また震災当時は博多に住んでいたのだが、2012年に岩手に移って世間で言われるものとは別の庶民的な感覚における被災のかたちのようなものを感じて、禊のような気持ちで書いた面もないことはないと思う」と語った。
佐藤 正午氏
直木賞の佐藤氏は佐世保からの電話会見となり、デビューして34年目にして初の直木賞候補で受賞したことについて、「取っちゃったなという感じだが、そういうめぐり合わせだったのかなという気もする。
作家の人生にはいろんなコースがあると思う。早いうちに直木賞と出会う道を歩く人もいれば、僕みたいにこの歳になってばったり出会う人もいる。マイペースを保って書いてこられた34年間で、60歳過ぎて初めて候補になったことに対しては、今まで全然出会わなかった直木賞に呼び止められて「ちょっと、寄っていかない」と言われて「え、今から?」というような気持ちはあった」と話した。
この記事の中でご紹介した本
影裏/文藝春秋
影裏
著 者:沼田 真佑
出版社:文藝春秋
「影裏」は以下からご購入できます
月の満ち欠け/岩波書店
月の満ち欠け
著 者:佐藤 正午
出版社:岩波書店
「月の満ち欠け」は以下からご購入できます
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