最良の嘘の最後のひと言 / 河野 裕(東京創元社)最良の嘘の最後のひと言のささやかなネタバレを含む解説|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年7月31日 / 新聞掲載日:2017年7月28日(第3200号)

最良の嘘の最後のひと言のささやかなネタバレを含む解説

最良の嘘の最後のひと言
著 者:河野 裕
出版社:東京創元社
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本作の紹介の仕方は、いくつかあります。まずは超能力者たちのコンゲーム小説であること。次にある巨大な企業の、特殊な採用試験が行われる一夜の物語であること。そして、登場人物はみんな嘘つきで、その嘘が暴かれるたびに状況が大きく変化すること。

ですが今回は、著者が自著に関して紹介する機会を頂きましたので、「どんな意図で書いた小説なのか?」ということをご説明したいと思います。

ささやかなネタバレを含みますので、ご注意ください。

この小説を書くにあたり、まず考えたのは「私が書きたいミステリとはなんだろう?」ということでした。密室、アリバイ、入れ替わり、消えた凶器、クローズドサークル、探偵。そういった、表面にみえる「ミステリ的なもの」の奥にある、私がミステリというジャンルに求めているものを明確化することから始めました。

あれこれ考えてみたところ、私がミステリに求めているのは、魅力的な「嘘」だと思い至りました。ひとつの嘘が物語全体を動かす原動力となるのが、私にとってのミステリのようです。

では、私はどんな「嘘」の物語を書きたいのか?

私にとっての「最良の嘘」とは、どんな形のものなのか?

多くのミステリで取り扱われる嘘は、犯人が作ったもので、主に自分自身の目的を達成するために用意されるのだと思います。でも私にとっての「最良の嘘」は、少し性質が違うように感じました。これは純粋に私の好みの問題で、フーダニット(犯人は誰か?)やハウダニット(どうやって犯行に及んだのか?)よりホワイダニット(なぜ犯行に及んだのか?)を、「謎解き」よりも「ハッピーエンドに至るまでの過程」を描きたい、という思いが強いことに寄ります。

つまり私は、「それ自体がハッピーエンドへと至る手段になる」「感情から生まれた嘘」を描こうと考えました。私にとっての最良の嘘とは、犯人が探偵(あるいは読者)に投げかける設問ではなく、探偵が犯人をあぶりだすための知的で有効な罠でもなく、その嘘をつくことで最良の結末へと至る道筋が生まれるものでした。

本書には様々なサイズの、様々な嘘が登場します。登場人物は嘘つきばかりで、手を組んだかと思えばすぐに裏切り、慌ただしく状況が変化します。その中で、深い位置でゆっくりと「最良の嘘」が進行していきます。その結末が幸福なものなら良いな、と思って書いたので、その結末が幸福なものなら良いな、と思って読んでいただけましたら幸いです。(三二五頁・六八〇円・東京創元社)
この記事の中でご紹介した本
最良の嘘の最後のひと言/東京創元社
最良の嘘の最後のひと言
著 者:河野 裕
出版社:東京創元社
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