中央線をゆく、大人の町歩き / 鈴木 伸子(河出書房新社)「中央線の魔力」は永遠に続く  日本一個性強烈な鉄道沿線の生々流転|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年7月31日 / 新聞掲載日:2017年7月28日(第3200号)

「中央線の魔力」は永遠に続く 
日本一個性強烈な鉄道沿線の生々流転

中央線をゆく、大人の町歩き
著 者:鈴木 伸子
出版社:河出書房新社
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雑誌「東京人」で中央線特集を初めて企画したのは今から二十年以上前の一九九五年のことだった。当時私はその編集部にいたのだが、編集部全員が、マイナー指向で反体制の香りのする中央線の沿線カルチャーを、特集という形で大々的に取り上げてよいものか迷いを感じていたのを記憶している。当時はまだメインカルチャーの勢力が強く、マンガ、ロック、アングラ演劇などサブカルチャー的な中央線沿線文化は軽視されていた。

恐る恐る出してみた特集号「中央線の魔力」はなぜか大当たりし、「東京人」では以後何度も特集を組むことになった。そんなことで、長期にわたり定点観測的にこのエリアを見つめ続けてきたという歴史が私のなかにはある。

その後、中野はおたくカルチャーの町になり、高円寺には女子に人気の古着屋街ができ、吉祥寺は住みたい町ナンバーワンになるなど沿線の話題には常に事欠かなかった。ほかの雑誌や書籍でも中央線をテーマにしたものが増え、その沿線カルチャーの濃さはより広く知られるものとなった。今では中央線の元締めとも言えるJR東日本でさえ「中央線が好きだ」というキャンペーンを行っていることを感慨深く思う。

そんなふうに中央線がブームと言えるような風潮となっても、取り上げられることが多いのは中野から吉祥寺あたりまでだ。しかし私が先頃上梓したこの本では、東京駅から高尾駅までの中央線快速区間の全32駅各駅を歩いてその沿線色をより堀り下げて解明してみることを試みた。

中野から上り側には新宿駅という今の中央線文化の源泉のような場所があり、その先には始発駅であり日本の中心の駅である東京駅がある。そして下り方向の武蔵野、多摩地区の各駅にも中央線の地霊は脈々と息づいていて、その各地での中央線エッセンスを見極めることがこの本の使命と考えたのだ。

大久保、武蔵境、西国分寺、西八王子など、当初はこの街については何を書いたらよいのだろうと正直とまどっていた土地も、現地に赴いて徘徊してみると必ず何かネタが見つかる。それが中央線がつなぐ土地土地の懐の深いところだ。

中央線沿線カルチャーはなにも反骨精神やアングラ色が強いものだけではない。古くからの郊外住宅地としての歴史や、武蔵野・多摩の豊かな自然、洗練された都心など、あらゆる東京の魅力を含んでいる。そしてこの沿線に住む人たちは、自分たちの街や沿線についていじられるのが大好きなのだ。

発売後売れ行きは絶好調ですぐに重版となった。この東京一、日本一個性強烈な鉄道沿線はこれからも生々流転を続けていくことだろう。(二〇八頁・六六〇円・河出書房新社)
この記事の中でご紹介した本
中央線をゆく、大人の町歩き/河出書房新社
中央線をゆく、大人の町歩き
著 者:鈴木 伸子
出版社:河出書房新社
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