白球ガールズ / 赤澤 竜也(KADOKAWA)女の子は甲子園に出られない!  高校野球、男女の垣根が創作の原点に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年7月31日 / 新聞掲載日:2017年7月28日(第3200号)

女の子は甲子園に出られない! 
高校野球、男女の垣根が創作の原点に

白球ガールズ
著 者:赤澤 竜也
出版社:KADOKAWA
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白球ガールズ(赤澤 竜也)KADOKAWA
白球ガールズ
赤澤 竜也
KADOKAWA
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かつて女性は、肉体的負担が大きすぎるため、マラソンを走ってはならないと信じられていた。女子マラソンがオリンピックに正式採用されたのは84年のロス五輪とその歴史は意外に浅い。女性が柔道に取り組むことは明治期より禁止されていて、五輪種目となったのは92年のバルセロナ五輪から。山口香ら先人の努力があったからこそ、日本女子スポーツのお家芸が誕生したのである。以前、日本女子ジャンプのパイオニアである山田いずみさんに取材した際に驚いたのだが、子どもの頃、「女の子がジャンプをするのは危ない」と競技を止められることもあったという。彼女の挑戦がなければ高梨沙羅選手の誕生はなかった。

スポーツにおける男性と女性の垣根が取り払われつつあるなか、なぜか日本高等学校野球連盟主催の大会だけは「その学校に在学する男子生徒でなくてはならない」と書かれている。リトルシニア、ボーイズリーグ、学童軟式、大学、社会人、プロはいずれも性別を問われない。春夏の甲子園だけが「女子はダメ」なのである。

どうしても甲子園に出たいと思っている女の子がいたとして、その壁に気づいた時、どのように思うのかな? 茨城ゴールデンゴールズの片岡安祐美さんのように、出場できないことを承知で野球部に加入するのだろうか? それともソフトボールに転身するのか。この一点が物語を組み立てる上でのスタートだった。

舞台に選んだのは香川県東かがわ市。私の父親の郷里であり、父を含む三人の兄弟いずれもがこの地にある三本松高校野球部の出身である。東かがわ市を「田舎である」とディスっている部分もあるのだが、私の原点でもある地域への愛情を込めての表現なので、地元の方にはご寛恕を乞いたい。

編集者からのリクエストが王道の青春モノだったので、熱血小説にしつつも、同性愛者、外国人留学生などのマイノリティを登場人物に加えた。エンタテインメントでもキモを外さなければ書きたいことが表現できるんだなと知ることができ、自分にとって財産になったと思っている。次作でも、しっかり王道を狙いつつ、ところどころで遊んでみたい。

これまでスポーツについてのノンフィクションはいくつか書いてきた。雑誌記事などのため、スポーツ選手のご家族や指導者に取材した経験も少なくない。その際、いつも感じたのは、トップアスリートたちが深い愛情に育まれていたということ。もちろん周囲の愛情の伝え方は一様でない。過剰なまでの熱い愛もあれば、厳しい叱咤激励という形での愛もある。信じているがゆえ、放任に近いような愛情もあった。

そして、もうひとつ。トップアスリートを取り巻く人たちは明るい方ばかりだった。ポジティブを与えられる家族や指導者がいてこそ、安心してスポーツに打ち込める。この二点をちゃんと本作に盛り込めているのかどうか。スポーツ小説は初めてだったので、手探りの部分も少なくなかった。読者の方々の判断にゆだねたい。(三二〇頁・六〇〇円・KADOKAWA)
この記事の中でご紹介した本
白球ガールズ/KADOKAWA
白球ガールズ
著 者:赤澤 竜也
出版社:KADOKAWA
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