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2016年8月5日

子供たちに動物の息吹を伝えたい


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子供の動物の本といえば図鑑が思い浮かぶ。たくさんの動物がずらりと並んでおり、名前を確認することで「動物を知る」ようにできている。だが、これは名前を覚えるのにはよいが、動物の生活を「知る」ことにはならず、その魅力にであうことにもならない。虫とりや魚とりをする子供たちは、あの川のあそこに行けばいる、あの林の縁に行くと出会う確率が高いなどを体験的に知っている。そしてどうすればうまくとれるかとか、飼育してみるといかにおもしろい生き方をするかを知っている子もいる。だが、これまでそういうことを「知る」ための子供の本はなかった。

『動物のくらし』を作ることになったとき、私は二つのことを希望した。ひとつは動物園的な図鑑ではなく、動物の生き方を伝えるものにすること。もうひとつはそのことを表現できるすぐれた画家を選ぶということである。そこで、次のような順序で動物を選ぶことにした。まず、現象をとりあげることである。たとえば、動物学的にいえば食性、生息地利用、移動、育児などである。それから、その現象を紹介するのにふさわしい動物を選ぶという順序である。たとえば食性であれば草食と肉食ということがある。その違いを比較するためにシカとタヌキを選んだ。そうすればカモシカやキツネを紹介しなくても理解されるはずだと考えた。要するにたくさんの動物種を羅列的に取り上げるのではなく、ある現象を解説するのにふさわしい動物をとりあげ、丁寧に記述することにしたのである。そしてそういうことが書ける著者を探した。

実際の執筆作業も紹介しよう。私が書いたもののうち、シカの場合、シカの生活を四季を追いながら物語性のある記述をした。「春の森のなか。木の葉をとおりぬけたやわらかな光がふりそそいで、下草にまで光があふれている。」という書き出しに続けて森の情景を描き、「森にシカのメスがあらわれた。ゆっくりすすんでは鼻でクンクンとにおいをかいで草をたべる。」と続けた。そしてそのイメージを描いてイラストレータの浅野文彦氏に送ると、まったく違うすばらしいものが届いた。そのときも驚いたが、最終段階ではこれに彩色され、文字通り命が吹き込まれたとき、本当に驚き、うれしかった。

こうして哺乳類だけでなく、鳥類、爬虫類、両生類、魚類について動物の息吹が伝わるような作品群ができた。著者たちは長年自分が観察してきた動物に愛情を注いだ文章を書いてくれ、その熱意とイラストレーターの才能がすばらしくかみあった作品になった。おかげで、できあがった本は子供だけでなく大人にも感動してもらえるものになった。
2016年8月5日 新聞掲載(第3151号)
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