マヌケ反乱のススメ!!!! 『世界マヌケ反乱の手引書』(筑摩書房)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年10月21日 / 新聞掲載日:2016年10月21日(第3161号)

マヌケ反乱のススメ!!!! 『世界マヌケ反乱の手引書』(筑摩書房)刊行を機に

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松本哉×栗原康 (下北沢・B&Bトークイベント載録)

九月十一日~十七日の一週間、高円寺に突如「NO LIMIT東京自治区」が出現。デモ、ライブ、トークなど、海外から一八〇人以上が訪れ、連日連夜国境を超えた交流が繰り広げられた。主催者のひとりは、二〇一一年「原発やめろデモ!?」でおよそ二万人を集めた「素人の乱」松本哉氏。イベント終了後の九月二一日、下北沢・B&Bで、新刊『世界マヌケ反乱の手引書 ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)を刊行した松本哉氏と政治学者の栗原康氏によるトークイベントが行われた。「NOLIMIT東京自治区」の狙いとは? 謎のマヌケ地下文化圏とは? イベント映像を流しながら会場一体となって盛り上がったトークの一部をお届けする。イベントに参加できなかった人は読むしかない!

(編集部)

貧乏人の逆襲から マヌケたちの反乱へ

松本 哉(「素人の乱」5号店店主)
松本
松本哉と言います。東京・高円寺の北中通り商店街で「素人の乱」というリサイクルショップや日替わり店主の「なんとかBAR」、ゲストハウス「マヌケ宿泊所」なんかをやっていて、仲間がどんどん雑貨屋、古着屋を開いたりしてます。もともと寂れたシャッター商店街だったところを使わせてもらって急速に店を増やしていったのが、もう十一年前。秩序が嫌でメチャクチャにやる方が楽しいんじゃないかと思って、混乱したりわけのわからないものが突然登場したりして、でも成り立っている。
栗原
混乱しながらも十一年やってるってすごいことですよね。
松本
そうですね、潰れないのが不思議なくらいで。家具とか電化製品とか置いてあるちゃんとしたリサイクルショップで、とんでもないアナーキーな店じゃないので、ちゃんと営業してるんだけど、「家賃をタダにしろデモ」とかくだらないデモやってみたり。
栗原
家賃値下げはすごく重要です。ずっと実家暮らしだったんですけど、最近やっと彼女と暮らそうかと思いはじめて。でも、家賃が高すぎて、これ東京は無理だぞみたいな(笑)。
松本
ほんと、家賃は諸悪の根源ですよね(笑)。それで、本の話なんですけど、二〇〇八年に『貧乏人の逆襲! タダで生きる方法』(筑摩書房)という本を出して、その頃って「素人の乱」が店を出したり、場所作りを始めて二、三年で、ひたすらメチャクチャなことをやって街を混乱させて増殖するみたいな頃で、その頃にサバイバル術みたいな本を書こうと思ったんです。この資本主義が渦巻いている都市の中で、貧乏人がどうやってたくましく生きていくか。野宿の仕方、ヒッチハイクの仕方、そういうのから始まって、タダで遊ぶ方法とか、デモのやり方とか、店の開き方を書いて、結論としては場所を作るのが大事だ、みたいな本だったんですけど、二〇一一年に東日本大震災、原発事故も起こって、放射能という強大な敵が現れてメチャクチャになりましたよね。
栗原
放射能は闘っても勝てないですしね。
松本
いま何とか東京にいられるような状態ですけど、当時は今後どうなるか本当にわからない状況だった。あのときの恐怖感ですよね。いくら場所作りして仲間をいっぱい増やしたりしても、その街が無くなったり、災害じゃなくても政治体制がコロッと変わって、全部駄目ってことになる可能性もあるわけで。

そういう風になったら全部無くなるんだと思って、これはヤバいと思って、各地を移動したり他の街で何かやってる人たちと繋がることが大事だと思って海外に目が向きました。

それに、反原発デモをやって、本当は最初の瞬発力で自民党や民主党とかの悪いヤツを懲らしめようと思ったんですけど、なかなか敵は手ごわい。となったら、デモなどをやり続けるだけじゃなく、もっとちゃんと地盤作りというか、ちゃんとモノを言えるような体制を作っておかないと、何でも言い成りにさせられるんじゃないかなと。それで、二〇一二年からアジア圏に行き始めた。
栗原
今回の『世界マヌケ反乱の手引書 ふざけた場所の作り方』(筑摩書房)にそういう場所が紹介されているわけですね。

素人の乱 × アナキズム

栗原 康(政治学者/アナキズム研究)
松本
栗原さんはヨーロッパって行くことありますか?
栗原
最近は行ってないんですけど、八年前のサミットの前後にドイツやフランスに行ったりしてました。
松本
アクティビストだけにかかわらず、アーティストにしてもミュージシャンにしても、ヨーロッパってすっごい国境越えてないですか?
栗原
越えてますね、ナニ人なのかわからないですから。
松本
ドイツ行っても、謎のイタリア人みたいなのがずっとその辺でうろうろしてて、いやーあっちつまんないから最近こっちにいるみたいなこと言ったりとか、うまく生活保護的なもの貰ったりとか。
栗原
うまく暮してるんですよね。
松本
いろんな手を使ったり、普通に働いてたりとか。あるいはプロテスト的な集まりがあると、車や電車でバーッと来て大混乱起こしてバーッと逃げる。あー終わった、終わった。悪を懲らしめたって言ってみんな帰っていく(笑)。あれ、スゲーなぁと思って、アジアでもそれぐらいの関係性がないと。もちろんプロテストだけにかかわらず、文化的な交流とかお店やスペースを作ってる人たちの交流とか考えても、そこを顔が見えた状態にしておかないと危ねぇなぁと。
栗原
確かにそうですね。ヨーロッパは激しくて、普通に車を燃やしたりとか、建物ぶっ壊したりして。
松本
景気いいですよね、向こうは(笑)。
栗原
やりたい放題で、「よーし、では帰るか」って。しかも帰る場所は不法占拠(スクワット)だったりする。本のなかでは、ドイツの巨大スクワット「クーピー」が紹介されてますけど、カネがないならないで、働かなくても楽しく遊んでるんですよね。地下にライブハウスがあって、むちゃくちゃに騒いでる。
松本
勝手に作ったヤツね。
栗原
別のスクワットになるんですけど、ドイツでゲストハウスがあるから泊まれるよ、いまケイという日本人が一人で泊まってるんだと言われて、だれだろう、どんな素晴らしいところだろうと見にいったら、廃車がダーッと並んでて、これがゲストハウスだって(笑)。そしたら、その廃車の一台からIRA(IRREGULAR RHYTHM ASYLUM/新宿のインフォショップ)の成田圭祐さんがヌクっと起きあがってきて、ひとこと「快適だよー」って言って、またすぐにバタッと寝てしまった。よっぽど快適だったのでしょう。ヨーロッパって、松本さんが言うようにマヌケが普通になってる感じがありますよね。
松本
栗原さん、自己紹介まだですよね。誰なんですか(笑)。

栗原
あっ、忘れてた(笑)。栗原ともうします。僕は大学の非常勤講師をやっていまして、週に一回だけ山形県に教えに行っています。研究しているのはアナキズムで、『大杉栄伝 永遠のアナキズム』(夜光社)とか、『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』(岩波書店)という本を最近出しました。年齢的には松本さんと四歳違い。主著は『はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)。アナキズムの思想のひとつが、反労働だったりするのでそういうのもありますが、大学院の頃からまったく食えなくなったので、無条件でうまいもの食わせろとか、ただカネだけほしいと思うようになって。

僕は二〇〇〇年代後半に矢部史郎(やぶ・しろう)さんという、アナキストの思想家からいろいろ教えてもらったり、一緒に動いたりしていたんですけど、その時期って、松本さんが大暴れしていた時期でもあります。路上鍋、三人デモ、等々。否が応でも刺激をうけますよね。いま矢部さんに「わたしを師匠と呼びなさい」と言われているんですけど(笑)、考えてみると、松本さんからも相当悪影響を受けているなと。
松本
いやー、心強いですね。でも俺働いてるけど、意外と忙しく(笑)。研究してる人がいるとこっちも騒ぎの起こしがいがあるっていうか。 
「NO LIMIT東京自治区」新宿・世界大バカ集結記念・鎖国反対パレード

松本哉は 貧乏でマヌケである


栗原
せっかくなので、本の感想を言わせていただきます。無茶苦茶おもしろいです。手に取ってもらえたらすぐ虜になると思うんですけど、文章もハチャメチャな勢いがあって、こんなふざけた人がいるのかと、あらためて思うような本でした。松本さんという人がすごくよく出ているんですよね。松本さんの原点が見える。それで、松本さんのことをひとことで言えば何になるんだろうと、昨晩、考えてたんですけど、こうかなと。“松本哉は貧乏でマヌケである”。“貧乏でマヌケ”っていうのが特徴かなと。貧乏なら働いて金稼いで貧乏じゃなくなればいいというのが、今の社会で言われてることだと思うんですね。でも、松本さんがやろうとしていることって、どうせ貧乏人が死ぬほど働いてもこきつかわれるだけで、どうせ貧乏なままなんだから割り切っちゃえよ、っていう発想だと思うんです。そこで開き直っちゃえば、あんまり働かなくてもやれることはいっぱいある、うまいものも食えるし、たくさん遊べる。しかも松本さんの場合、そこにマヌケっていう要素がくわわってくるんですよね。いま、ひとはこうやって生きるべきだという一本の線がひかれているんだとしたら、そこにポーンと間が抜けるのがマヌケ。貧乏がいやならおまえら朝から晩まで働けよと言われてるけど、そうじゃなくていいよっていうのを気付かせる行動を打ちだしていく。それこそ、『貧乏人の逆襲!』の中でも、たくさん紹介されていますが、貧乏人はひとりじゃたらふく食えないから、みんなでちょっとずつ金を出しあって、コタツで鍋を囲んで酒を飲めばいいんだと。もしかしたら、そこまでだったら言うひとがいるかもしれませんが、松本さんの場合、大学構内や路上にそのままドーンッとコタツや鍋をだして宴会をやるんですよね。そんなの見ちゃったら、ガーン何やってんだと思いますよね。もはや何が普通かもわからない。しかも、そこに変な連中が集まってくれば、もっともっと変なことをやりはじめるかもしれない。あと、あらためておもしろいと思ったのが、デモは祝祭である祭りであるとか、研究者がよく言ったりしてるけど、松本さんの場合は本当に神輿出したりするじゃないですか、イカレてますよね(笑)。
松本
人がびっくりすることやりたいんですよね。いかにもなデモになったら、それはデモとしての効果がないなと。「なんだこりゃ!」みたいなのが必要かなと。
栗原
一〇歳くらい下の子の話なんですけど、その子が生まれて初めて出たデモは、二〇一一年四月の素人の乱のデモだったらしいんです。そのデモがあまりにも開放感があったので、運動をやってみたくなったと。それで素人の乱のことを調べるんですね。東洋大学の子だったんですけど、これはもう大学で鍋をやるしかないと。名のった名前が「東洋鍋子」(笑)。良かったのか悪かったのかわかんないんですけど、そういう変な子とかも現れてきたりするんですよね。そういう意味でも、人をあっと言わせるようなことをやり続けるって、すごく大事だなと思って。今回の本では、他にもいろいろおもしろい行動が紹介されていますが、メインはスペースを作ることですね。でも、基本は一緒。スペースがあることで未知と遭遇するというか、変な連中との出会いがあるということですね。
松本
実際、場所を作ってみたらいろんな人が来るようになってそれもいいんですけど、一瞬来るだけじゃ意味がないということに気付いて。長居してもらうために「なんとかBAR」やゲストハウスを作って一週間とか滞在してもらったりするようになってきた。長期滞在してずっと人が居座っている状態を作っていけば勝手にいろんなことが起こってくるんですよね。面白いことやってる人と友だちになったり、何かしら面白い繋がりが出来てくる。そういうことが起こりうるためにもゲストハウスの宣伝もオルタナティブスペースだけでフライヤーを撒いたりして、その手の人が集まりやすいようにしてます。いろんなところに変な場所が増えて欲しいので、この本では、お金がいくらかかって、こういうふうにやって、保健所はここがうるさいとか、消防署はこれが手ごわいとか、異常に詳しく書いてあるんです。
栗原
超簡単!と書いてあるんですけど、結構大変ですよね。
松本
近所の人とのバトルとかね(笑)。乗り越えなきゃいけないこともあったりする。無責任に店開いちゃえばいいんだよじゃなくて、そのへんを丁寧にこうやったら出来る、こういう苦労もあるというのを含めて説明したいなと思った。
栗原
ところどころ出てくるアドバイスもおもしろくて、「なんとかBAR」にいろいろ苦情が来て警察呼ばれたりするんです。警察に対してどうすればいいかっていうのが端的で素晴らしくて、“警察の電話には出ない”(笑)。
松本
たまに出る。ずっと出ないと怒られるから「いやーちょっと携帯がおかしくて」とか細かい小ワザで(笑)。あんまり真面目になんないってことですね。そうそう、こういう場所には思いもよらないふざけた人が来る一方、普通に真面目に生きてる人も来たりする。同じ感じの人だけが集まる場所を作っても面白くないんで、いろんな人が来る場所は必要なんだなと。
栗原
同じ人だけで集まっていると、だんだん孤立してきて。ちょっとした違いとか気になってケンカをはじめたりしますから。
松本
『世界マヌケ反乱の手引書』の最終章では、いろんな場所とか変なスペースの繋げ方を書いてます。どうやってお互い知り合うか、共同作戦をやるか、無責任な提案から具体的な提案まであって、今一番やりたいなと思ってるのはそれなんですよ。海外でも国内でも、そういう同じタイプじゃない人たちの謎の遭遇を繰り返していったら、アジア圏の近場でも何か面白いことが起こるんじゃないかって。大使館を作った方がいいとか、勝手にパスポートを発行しようとか、お金を作ろうとか、いろんな作戦を勝手にやってみようと。
栗原
本当に「世界万能旅券」発行してるんですよね。
松本
そうそう、あれを使っていろんなところを人が渡り歩いてる。本の最後にはそんな渡り歩けそうな「世界のとんでもないスペース一覧表」も載ってるんで非常に便利! 一覧表のところに個人名も載っていて、この店長の誰々がこういうバカだからこいつに会った方がいいとか(笑)。その人の名前を出すと向こうもなんで知ってるのって絶対喜ぶから個人名とかエピソードをなるべく書くようにしてて、その話をふってもらえば絶対友だちになると思うんです。普通にいいカフェがあるっていう紹介と全然違うので、そのへんをうまく使ってもらえればいいと思うんですね。

謎のアンダーグラウンドマヌケシーン

「NOLIMIT 東京自治区」国立・アジア永久平和デモ

栗原
九月十一日から一七日まで、アジア各国からマヌケどもが集まって高円寺でイベントをやってたんですよね。
松本
最近積極的に海外出てたんですけど、行って親しくなると自分との関係は強くなるんですよ。でも、それだけだと意味なくていろんな人同士が仲間にならないと、俺が死んじゃったら終わりになるなんて可能性もありますよね。だから、みんなが一同に会して謎のアンダーグラウンドマヌケシーンを作るために、一週間遊ぶのが大事なんじゃないか思って、それで「NO LIMIT 東京自治区」をやったんです。各地のオルタナティブな活動をやってる人とか、インディーズのミュージシャンだったりアーティストだったり、お店をやってる人とか、変な顔してる人とか、みんな集めようってなったんですけど、ありがちなのは、集めるときってリーダーっぽい人が集まったりするじゃないですか。あれねー、駄目なんですよ。いい話聞けたり、為になったりするけど、実は本当に面白いやつって、しっかりした人のまわりにいるマヌケな奴らなんです。あいつらも呼びたい!となって、一日一回食えば死なないんで一日一食メシは無料、寝る場所も全部無料っていうふうにして、ひたすら来い来いって呼びかけたら、一八〇人くらい外国人が集まった。
栗原
僕も一日だけいったんですけど、すごい熱気でした。
松本
「東京自治区」のやりたいことはこういうことなんだ、すべての常識を壊すんだってのを目標に、初日は九月十一日の日曜日の夜で、いきなり日曜の夜にオールナイトでライブという挑戦的なことをやって、来れるもんなら来てみやがれ、このやろーみたいな(笑)。今回北京や上海、広州などからも来てて、中国から来てるってすごく大事だと思うんですよ。香港・台湾・韓国・日本は割と自由に反体制的なことを言ったり、独自の価値観で生きるみたいなこと言っても大丈夫なんだけど、中国ではいろいろ厳しくて、いろいろやるのはすごい大変。それに、各国間の政治関係なんかを考えた時に、中国だけいないと単なる中国包囲網じゃないかってことになっちゃうから中国から呼ぶのがすごい大事でだいぶ頑張って呼びかけた。中国の人もライブではノリノリで、政治の世界では香港、台湾なんて相当中国の圧力があるけど、実際遊んでる時は関係なくて、普通に中国人がダイブして台湾人が受けとめるっていう美しい光景とかいろいろ見たりしました(笑)。各種イベントもあって、トークショーとか映画の上映会とかマジックショーとか運動会とか真面目なのからくだらないものまでいろいろありましたね。
栗原
僕が参加したトークイベントでは、お子さん連れのお姉さんが韓国語の通訳をしてて。その間に、まわりのひとが子どもをあやしているんですよね。そういうの、いい感じだなと。
松本
みんな言葉が違うからイベント始める前に何語わかりますかーって聞いて、中国語、広東語、韓国語とか、通訳いっぱい入れてやった。近くの公園で運動会をしたんですけど、ロクでもないマヌケな奴らを集めるからルールとか無理なんですよ。誰もルールを守らない(笑)。
栗原
イベントっていくつくらいあったんですか?
松本
イベントは五〇以上ありましたね、同時進行だから全部見られないんです。あと、一八〇人の人たちが来るっていうと、実際受け入れが大変でした。海外から来た人は「世界万能旅券」を見せればすべてのイベントが無料で飯も宿泊も無料なんだけど、寝る場所もイベントスペースやゲストハウスも無料開放したり、泊めてくれる人も募集して。宿泊は当たりはずれがあって、普通のマンションもあれば、はずれに近いボロアパートもある。海外から無料宿泊施設があるって来たらコレかよみたいな(笑)。なんだかんだ言って、みんな楽しんでましたけどね、合宿みたいで。イベントが始まる前に、大体二〇〇人が一週間飯を食うと考えて米を二五〇キロ大募集したら目標を超えて二七〇、二八〇キロくらい集まった。みんな各地からおかずや食材を持ってきてくれて、みんなでご飯食べるって良かったですね。すごく美味しかった。
栗原
お腹が空いてきました。

アジア各国の大バカたちが集結!

松本
イベント以外にデモは二回、初日の国立と最終日の新宿。国立の人たちのデモっていうのが、また高円寺と違っていてノビノビしててわけわかんないですよ。国立デモの恐ろしさを実感しました。
栗原
映像をみると、一瞬で恐ろしさがわかる(笑)。
松本
高円寺の恐ろしさとまた違う(笑)。YAMAGATA Tweaksterという韓国のミュージシャンも参加していたんだけど、彼は韓国の自立音楽生産組合という活動をしている。韓国は時給もすごく安いし、インディーズで音楽をやりながら生活するのは超むずかしいから、どうやって音楽をやり続けながら生きていくか考える組合なんですね。韓国にも「ドゥリバン」っていうスクワットみたいなところがあって、そこに行ったときに知り合った。
栗原
韓国のYAMAGATAさん、日本語をおぼえたみたいですね。(記録映像で)「安倍はゲス野郎!」って言ってます(笑)。
松本
誰か教えたんですかね。政府とかってどこの国も悪いことやっててロクでもないじゃないですか、基本。一つの国の人が一つの国の政府に文句を言うのがつまんなくて、矮小な問題になっちゃうっていうか。そうじゃなくて全員で全部の政府に文句言う。これ一番破壊力がありそうですね。

高円寺駅前で連日路上飲み会があったんですが、実はこれが一番すごいイベントだったかも知れない。毎晩夜十時、十一時位になるとみんな行き場所がなくて一八〇人が入れる飲み屋とかないじゃないですか(笑)。まして日本人もいるから二〇〇、三〇〇人が常にウロウロしててしょうがないからみんな高円寺の駅前の路上で飲むんですけど、そこで感動的なシーンがいっぱいあった。みんな言葉が通じないから、込み入った話にならなくて喧嘩にならない、それがすごい。
栗原
そうか、ケンカしない秘訣は込み入った話をしない(笑)。みんな言葉は通じないはずなのに、なんか会話が成り立ってる。
松本
原始人ってこんな感じだったんじゃないか、こうやって仲良くなったんじゃないかと。これが一週間以上続いた、恐ろしいですよ。馬鹿なことやってるけど、これでみんなどんどん仲良くなって連絡先交換したりしてたから。一週間遊ぶとホント違うんですよね。ホントに仲間みたいになって泣きながら帰っていくんですよ。「楽しかった、夢のような世界だった」と。そうするとこっちも嬉しくなったりして。久々にスゴイ自由だったなーっていうのが終わった感想でした。
栗原
路上であれだけ人が集まってても、(警察に)やられないもんなんですね。
松本
一応見には来たけど気をつけてねくらいで。
栗原
松本さんがデモの中で、「なんだかわかんないけどザマーミロ!」って叫んでましたけど、ほんとにそんな感じですね。

革命後の世界を意識して行動する

「NOLIMIT東京自治区」 高円寺駅前路上交流会

栗原
高円寺の駅前でみんなが飲んでる姿見ると言語なんて通じなくても会話が通じていて、国がほどけたなっていう気がしますね。松本さんは、本の中で革命後の世界を意識するところから行動を始めると書いたりしていると思うんですけど、こういうことをイメージしているのかなと思いました。
松本
いや、今はまさにそういうイメージですね。でも、僕が初めて社会運動的なものに接した大学生のときは九〇年代だったので学生運動とかが残ってたりしてて、そこまで世の中に反発するなんて見たことないし、最初は刺激的でちょっと興奮しましたね。
栗原
最初、大学構内で演説してたり、無数にタテカンが並んでたり、シュプレヒコールをやっているひとをみただけでもすごいと思いました。
松本
突入したりとかね。真面目な社会運動多いですけど、そういう運動はなかなかうまくいかない。デモも労働組合にしても、どこかの政治団体にしても、すごい真面目に革命起こそうみたいなことを言うけど。
栗原
プログラムを作ってカッチリやりますよね。
松本
その当時も説得力がないなと思いましたね。これこれこうしたら素晴らしい世の中になるに違いないって断言してるんだけど、ビラ配ってる人からして胃潰瘍みたいな顔してるわけでしょ。こんな顔になりたくねぇな、みたいな。ホントかよ、こんな辛い思いして革命起こすの?みたいな。
栗原
そういえば、二〇一一年、松本さんたちが主催してた反原発デモに、ぼくも行っていたんですけど、ちょっと疲れてビール休憩をしてたとこに、おっさんがビラを持ってきたんですね。それで、自分たちの集会の趣旨を説明するんだけど、つまんねぇな、もらいたくねぇなと思ってニヤニヤしてしまったら、激怒された。「おまえらみたいに、遊んでればいいと思ってるから革命が起きないんだよ!」って。
松本
そうなんですよ。反原発デモやって馬鹿騒ぎしたとき、いろんな人が連絡してきたんですけど、いきなり見ず知らずの人からの電話で「三里塚闘争やんないのか」と言われて、いやそれは応援してるけどあっちこっちできないしと言ったら、「なんでやんないんだ、お前みたいな奴がやんなきゃいけないんだ!」みたいに怒られて。なんで怒るんですか、みたいな。やっといてくださいよ、うちらは今こっちのことやるから全部できませんよ。

いろんな問題は大事なんですけど、でもうちらにできることはこういうふうになったら楽しいんじゃないか、こういう世界を作りたいというのを人に見せたいんですよね。文字や理論で見せるんじゃなくて、実際の謎の状態で見せたい。
栗原
それでおもしろかったら、もうちょっとやってみようかと思いますね。権力に対抗して革命後のプランをプログラム作ろうとすると、こっちが権力みたいになってたりしますし。
松本
闘う方も同じ土俵に乗らなきゃいけなくなると、つまんなくなってくるし、勝ったときにまた同じ社会になるんじゃないかな。怖かったり暴力的なやり方で世の中を変えたら、その後も、そういう怖い世界になるんじゃないかっていう恐怖感はあります。本当に自由が来るんだろうかみたいな。勝手なことやってる人たちがいたり、謎のエリアがあったり、それが少しずついろんなところにいっぱいできて、言うこと聞かない奴らが出てきて、今の悪い権力者の力が徐々に削がれていくっていうのがいい流れなのかなという気がする。

デモもそうだし、「NO LIMIT」もそうだけど、自分たちのセンスを全開に出すのが一番の力だと思うから、自由な発想力みたいなのをどんだけ使えるかの場を提供することが大事で、例えば参加者に対してこういうのやってくださいとかっていうのは人数だけ集めて出来るし簡単かも知れないけど、本当の脅威にならない。

二〇一一年の反原発デモも、反原発の範囲内なら何やってもいいです、但し自分たちの行動は自分たちで責任取ってください、っていうノリで呼びかけました。世の中にはいろんなセンスの人がいるから、いろんな表現が出てきたらいいなと思ってました。極端な話、ホントは火炎瓶とかもやってほしかったんですよ、責任取らないけどね(笑)。全共闘世代とかのまだやり足りないみたいな人たちに昔のスタイルで突入して欲しかったですよ。決死隊みたいなの作ってね、老人の。今こそやれますよって、すごい言ったんですけど(笑)。
栗原
慣れているから、マジで強いんですよね。
松本
全共闘世代の人たちは百戦錬磨の闘志じゃないですか。だから警察の応援とか来るときの動きとか読める。「危ない!ここが危ない!」とかって(笑)。見たことない謎のオッサンが号令出してるから、ポカンとしてるとホントにその動きで警察が来たりしてスゲーなと。みんなの持ち味出さないと駄目だなと思いましたね。

今回の「東京自治区」って名前なんだけど、意外とこれが自治できる。金とられたりなんないんです。困ってる人をみんなで助けたりね。多少の喧嘩はありましたけど、イベントもすごい手伝って準備してくれたし、ヤバそうなミュージシャンも怖くない、一緒におにぎり握ったりして。
栗原
おにぎり握るといい人感出ますね。
松本
世界中のいろんな場所が繋がって一緒に何かやったり、ごちゃ混ぜになったら面白いことができるんじゃないかって。世界中のマヌケたちが勝手にやり出す反乱。今回の「NO LIMIT」の後に何が起きるかすごい楽しみです。すでにローカルな人たち同士が全部飲み仲間になっちゃってるから。国境を超えてね。 
この記事の中でご紹介した本
世界マヌケ反乱の手引書/筑摩書房
世界マヌケ反乱の手引書
著 者:松本 哉
出版社:筑摩書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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