創刊65周年 『明星』連載文芸作品をよむ 第2回 三島由紀夫『新恋愛講座』『わが思春期』― 阪本 博志 三島由紀夫「新恋愛講座」760円・ちくま文庫|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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創刊65周年『明星』連載文芸作品をよむ
更新日:2017年10月14日 / 新聞掲載日:2017年10月13日(第3210号)

創刊65周年 『明星』連載文芸作品をよむ
第2回 三島由紀夫『新恋愛講座』『わが思春期』― 阪本 博志
三島由紀夫「新恋愛講座」760円・ちくま文庫

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新恋愛講座(三島 由紀夫)筑摩書房
新恋愛講座
三島 由紀夫
筑摩書房
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『明星』に寄稿していて『平凡』に寄稿していない作家のひとりに、三島由紀夫がいる。

三島は、一九五五年十二月号から一九五六年十二月号まで『新恋愛講座』を、一九五七年一月号から同年九月号まで『わが思春期』を連載した。前者は、『新恋愛講座 三島由紀夫のエッセイ(2)』(ちくま文庫)で、後者は、『私の遍歴時代 三島由紀夫のエッセイ(1)』(同。現在は品切れ)で読むことができる。

この担当編集者であった粉川宏の著書『今だから語る「三島由紀夫」』(星の環会)によると、『明星』と三島との出会いは、「大勢の思春期の人たちに向けてわかりやすく……」という、編集長・本郷保雄の再三にわたる連載依頼からだった。初め本郷は大衆のための小説を依頼したが、三島の都合がつかず、口述筆記による恋愛論に落ち着いた。

『新恋愛講座』の最後の掲載となった一九五六年十二月号をひもとくと、「次号より新連載」という、『わが思春期』の告知記事を見ることができる。そこに記された三島の言葉の後半に、次のくだりがある。
「私自身が自分の思春期を生き抜くには、どんなに荒波をくぐる思いがしていたか、今思い出してもゾッとするのである。あの自己嫌悪、あの自分を苦しめる潔癖さ、あの病的な羞恥心、……すべてはまるで熱病と同じであった。それにそのころにはこの『明星』みたいに、男女の交際から性の知識まで、十代の少年少女に、かんでふくめるように教えてくれる不思議な雑誌などなかった。すべては五里霧中であった」。

一九四五年十一月に刊行が始まった先行誌『平凡』は、一九五〇年代前半に飛躍的に部数を伸ばした。そのきっかけのひとつは、小糸のぶ『乙女の性典』の、松竹での映画化を前提とした連載であった(一九四九年三月号から同年八月号)。このことに象徴されるように、読者の青少年が持つ性や男女交際についての悩みや関心に応えた企画は、『平凡』『明星』に通じるものである。

『明星』では一九五三年六月号から一九五五年四月号まで、池田みち子『花開く乙女たち』が、「思春期小説」と銘打ち連載された。

それとともに、女医が連載を持つようになる。一九五三年十月号から一九五五年十二月号まで、常安田鶴子を読者が囲む座談会『思春期の性典』。続いて一九五六年一月号から一九五七年十二月号まで、「性医学小説」と銘打たれた常安『若き日の性典』。一九五六年六月号からは常安の『誌上相談室 思春期の性医学』の連載が始まり、彼女の上記小説とともに掲載された。

一九五七年十月に常安が亡くなったあと登場したのは、ドクトル・敬子(本名:田中敬子)である。一九五八年二月号から一九五九年六月号まで、『青春診察簿』が「性医学小説」として連載された。そして翌七月号から一九六〇年六月号まで、ドクトル・チエコ(本名:木下和子)の座談会『女医さんの診察室』が連載された(以上と同様の記事は、『平凡』にも存在する)。

一九五〇年代『明星』における性愛についてのおもな連載企画を概観したが、三島の連載の、誌面における背景を理解できよう。一九二五年生まれの三島が『明星』を、「不思議な雑誌」と言いあらわしたことは、『平凡』『明星』のひとつの本質をついていたのである。

最後に、口述筆記時の三島の模様を、粉川の著書から引用したい。『新恋愛講座』において、古代ギリシアに始まり文学や映画をとおして縦横に恋愛を語った三島の姿が、目に浮かんでくるようである。

「天井をみあげ、いつものようにタテ板に水……言い直したり、言葉につまったり、「あのう」とか、「そのう」という言葉を入れたりすることなく、一気呵成に口述筆記にはいられたのだった。/私は、けんめいに速記する野生司氏のかたわらで、思わずポカンと口をあけて、そんな氏の驚くべき才能ぶりを眺めていた」。(文中敬称略)
この記事の中でご紹介した本
新恋愛講座/筑摩書房
新恋愛講座
著 者:三島 由紀夫
出版社:筑摩書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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