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読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年8月19日 / 新聞掲載日:2016年8月19日(第3153号)

待望の宮城聰論! ミクロとマクロの視点の往還 


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宮城聰の作品と言えば、一つの役柄を、台詞を語らず身体で表現する「ムーバー」と、「ムーバー」に対して科白を語る「スピーカー」による「二人一組」で演じる宮城独自の演出方法を思い浮かべる方も多いだろう。本書は、1990年にはじまるク・ナウカシアターカンパニーでの作品から最近の静岡舞台芸術センター(SPAC)での演出家そして芸術総監督としての仕事に至るまで、国内外で高い評価を受けてきた宮城聰の仕事について書かれた初めての本である。

本書は「インタビュー篇」と作品を論じた「作品篇」の二部からなっている。第 一部では、宮城聰をはじめ、俳優やスタッフへのインタビューが収録されており、宮城作品の創作の内側を垣間見るような貴重なエピソードもあり、本書の大きな魅力となっている。第二部では、宮城の14本の演出作品を、「旅」「ジェンダー」「言語」「身体」の4つのテーマに分けて論じているのだが、個々の作品論は単なる解説を超え、宮城作品の醍醐味を十二分に伝えてくれる秀逸なものとなっている。それは、舞台装置から俳優の指先の動きに至るまで、精緻に作り上げられた宮城の作品を細部に至るまで詳細に分析し読み解くミクロの視点(例えば第2部3章や6章)と、作品の歴史的・社会的・文化的コンテクストを冷静に見渡し論じるマクロの視点という、著者である塚本・本橋両氏のそれぞれの強みが一つの議論として見事に展開されているからだろう。また、各章は7節に別れており、節の多くには「ラジオと盆」「文机と袴」のように舞台上に表れるモノが副題として添えられている。これらの具体的なモノを取り上げることで、個別の作品を論じる際のミクロとマクロの視点の滑らかな往還を可能にしている。

本書は、宮城の舞台を巡り行われる著者二人の、そして二人と宮城作品との対話の記録でもある。本書において著者たちは、宮城の仕事について「安易な解答・解説」を提示するのではなく、むしろ別の視点からも論じる可能性を示唆しつつ、我々読者に、この二人の対話に加わるよう誘っているようでもある。本書が宮城聰の仕事についての「ガイドブック」以上の価値と意味を持つのは、まさにこの点にあるだろう。第一部のインタビューから巻末の「宮城聰主要演出作品リスト」にいたるまで、演劇人宮城聰の仕事に接する者にとって必携の一冊である。
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