第54回 文 藝 賞 贈呈式開催 「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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2017年11月3日

第54回 文 藝 賞 贈呈式開催
「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子

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10月23日、東京都内で第54回文藝賞の贈呈式が行われ、「おらおらでひとりいぐも」の若竹千佐子氏に賞が贈られた。

各選考委員の挨拶と祝辞ののち、受賞者の若竹氏は、「皆さんを前にして本当に胸がいっぱいで、私はこんなに幸せでいいのだろうかと、夢のようです。私の小説など、もう日の目を見ることはないのだろうなと思っていました。それでもここまでやってきたのだから、自己完成を目指して、それだけでいいじゃないか、小説を書き続けよう、それで悔いなしと思っていたところに、文藝賞の最終選考に残ったというお電話をいただきました。本当に幸せでした。

自分でも本当に不思議ですが、私は小説を書く人間なんだ、小説を書くべきなんだと子供の頃から何の根拠もなしにそう思っていました。進学した地元の大学でも、普通に人格の陶冶とか自己変革とか、そういう言葉が飛び交っていましたので、私も私の書く小説は人が変わっていくその姿を書けばいいのではないかなと思っていました。ところがいざ原稿用紙に向かってみると、一体何を書けばいいのだろう、どうやったら人が変わっていくのだろうということがまったくわかりませんでした。何をどう書けばいいのか。それで自分の夢がなかなか思い通りに行きませんでした。でも私は楽天的な人間で、そうやって苦しんでいるにも関わらず、苦心惨憺して歯噛みして生きてきたわけではなく、その時その時を元気で楽しく生活に没頭して生きてまいりました。長く生きてみて人生それほどいいことばかりではなかったなというのも私の実感ですけれども、それでも振り返って私の生き方に一つの一貫性を見つけられた時、私は小説を書くテーマが見つかったと思いました。
若竹 千佐子氏
63歳でこういう席に立つことになりましたが、やはり私にとってはこの63年という時間がきっと必要な時間だったのでしょう。小説の神様が本当にいるならば、私の神様は気長に辛抱強く私を待っていてくれたのだなと思います。63歳にして初めてプロの小説家としてのチャンスをいただきましたが、焦らず自分の実感を手応えのある言葉で書いていこうと思っております。

私の小説の先生は根本昌夫先生なのですが、先生は、書き終わった小説でもその主人公にたまに会いに行ってごらんなさいとよく言われます。私も桃子さんに「やあ、元気?」と会いに行くつもりですが、もっと会いに行ける場所を増やしたいと思っています。これからどんな主人公が現れるかはまったく見当もつきませんが、これから心の中に、いろんな小説の主人公とのコミュニティを作ろうと思ってワクワクしています。それと同時に、いま私はどういう社会に生きているかということを忘れてはいけないと思っています。自分の心の探索と、社会に向ける目線を二つながらしっかり持ちつつ、小説を怠けないでやっていこうというのが、こういう場を設けてくださった皆さんに対しての私の感謝だと思っております。本日はありがとうございました。」と、時に涙を浮かべながら受賞の喜びを語った。
この記事の中でご紹介した本
おらおらでひとりいぐも/河出書房新
おらおらでひとりいぐも
著 者:若竹 千佐子
出版社:河出書房新
以下のオンライン書店でご購入できます
2017年11月3日 新聞掲載(第3213号)
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