対談=野矢茂樹×難波博孝 言葉が変われば日本が変わる 『大人のための国語ゼミ』(山川出版社)を基軸に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2017年11月9日 / 新聞掲載日:2017年11月3日(第3213号)

対談=野矢茂樹×難波博孝
言葉が変われば日本が変わる
『大人のための国語ゼミ』(山川出版社)を基軸に

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第2回
国語教育の変化と現状

野矢 茂樹氏
野矢 
 今、国語教育の在り方が、昔とずいぶん変わってきていますよね。少なくとも私が習っていたころは、国語の教科書にいい小説、いい評論、いいエッセイが載っていて、国語の授業は、先生と一緒にそれを鑑賞する時間だった。それが中学校の国語教科書の作製に携わってみて、ずいぶん進化していると驚いたんです。ただ高校の教科書は今でも旧態依然たるものがあって、名文選の性格が色濃い。小・中学校はこれだけ変わってきているのに、どうして高校は変わらないのか。答えは簡単で、大学入試が変わらないから。
しかし、そもそも小・中学校の国語は、いつごろから変わり始めたんですか。
難波 
 明確な時期を示すのは難しいですが、まず小学校が変わって、次に中学校へとだんだん変わっていったんです。一番大きい変化は、ひとつ前の小学校の指導要領に、「言語活動」という項目が入り、「知識の活用」ということが盛んに言われるようになったこと。そしてこの一連の変化の引き金は、PISAショックですね。
野矢 
 十五歳対象の国際学力テストですね。何年ぐらい前のことですか。
難波 
 二〇〇三年だから、まだ十四年です。二〇〇三年、二〇〇六年と引き続き、「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「読解力」の三分野について、日本の学生の順位が下がったという出来事です。しかし順位以上に、PISAで出てくるような問題を、日本の教育関係者のほとんどが、見たことがなかった。このショックが大きかったと思います。これを子どもたちが解けるようになるにはどうしたらいいのか。とにかく、知識を詰め込むだけではだめだ、と。認識が大きく変わったのがこのときです。

一方で、日本では大正時代から、デューイの経験主義に基づく単元学習が、採用され続けています。社会科では問題解決学習、理科では仮説実験授業、国語では総合単元学習、などと呼ばれるカリキュラムです。PISAショックを受けて、こうした単元学習の有用性が再認識されたことも、小・中学校の指導要領の変化に影響しています。
野矢 
 教育の場面で「経験主義」というのは、どういうことを言うんですか?
難波 
 実際に経験することでしか、あるいは具体的な状況の中でしか、学べないものがある、ということですよね。野矢さんの書いている、具体的な相手を想定して、文章を読んだり書いたりしないと、本当は読めていないし、書けていないんだよ、という指摘にも通じます。
野矢 
 いよいよと言うべきか、大学入試も変ろうという動きを見せ始めましたよね。二〇二一年の一月実施分から、センター試験は大学入学共通テストとして新しくなります。で、今年の五月に発表された大学入試センターのモデル問題をHPで見てみると、記述式問題の国語では、資料として「街並み保存地区」景観保護ガイドラインがあり、これについての親子の対話から出題されている。もう一題は、もっと驚きますが、「駐車場の使用契約書」を読んで、不動産屋に対し異議申し立てをせよと。非常に現実的な場面に即した、問題解決能力が求められている。これが新しい国語の問題なんですよね。
難波 
 高校、大学の先生にとっては、衝撃だったかもしれませんが、小・中学校の先生は、この手の問題に既視感があるはずです。 というのは、全国学力・学習状況調査というものが、二〇〇七年から毎年一回、計一〇回行われていて、その内のB問題が、新共通テストとそっくりなんですよ。一〇年、積み重ねられてきた成果が、ここに生かされているのだと思います。
野矢 
 なるほど。確かにこういう問題は、一朝一夕に作れるようなものではないね。 
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この記事の中でご紹介した本
大人のための国語ゼミ/山川出版社
大人のための国語ゼミ
著 者:野矢 茂樹
出版社:山川出版社
以下のオンライン書店でご購入できます
なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践/英治出版
なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流 自己変革の理論と実践
著 者:ロバート・キーガン
出版社:英治出版
以下のオンライン書店でご購入できます
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