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2017年12月8日

第六十五回 菊池寛賞 贈呈式開催

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第六十五回菊池寛賞受賞者一同
12月1日、東京都内で第六十五回菊池寛賞の贈呈式が開催された。受賞者は夢枕獏氏、映画「この世界の片隅に」に関わったチーム一同、チューリップテレビ報道制作局、奥本大三郎氏、浅田真央氏、岸惠子氏の六組。各受賞者に正賞の置き時計と副賞百万円が贈られた後、選考顧問会(東海林さだお、平岩弓枝、保阪正康、養老孟司氏の四名)を代表して保坂氏は選考の言葉と受賞者への祝辞で、「夢枕さんのお仕事は、長年にわたって独自のジャンルを築かれてきた。独自の文学空間を一途に守りながら、そこから枝葉のように伸びるジャンルを一つ一つ整備されるという大変なお仕事だったと思う。平岩さんが、その多岐にわたる執筆活動は、一つの文学賞には収まりきれないとおっしゃっていたが、その40年という節目にこの賞はふさわしいと選考顧問誰もが納得した。
『この世界の片隅に』には私も感動したが、私が感動した所以は、さりげないシーンが考証が深くなされて歴史的史実にきちんと基づいて描かれ、それによってテーマがきちんと伝えられているというところだった。この作品は当初は封切館が63館だったのが、口コミで広がって最終的には二百万以上の人を動員したという。こうした地に足の着いた仕事がひとつづつかたちを作っていったことは、日本の文化の下支えであると同時にこれからの方向性を示しているのではないか。大資本が行い得ないようなことを着実に進めていったきわめて有意義な仕事だった。

チューリップテレビは社員74名という小さな会社のようだが、熱意のあるジャーナリストたちが、富山市議会の政務活動費の不正問題を追い、そこから全国へと広げていった。丹念に事実をえぐり出していくという、ともすればジャーナリズムが忘れがちなことをあらためて教えてくれた貴重な仕事だった。こういう仕事がやはり次の時代の主軸になるべきであるというのが選考顧問みんなの共通の思いでもあった。

『ファーブル昆虫記』は誰もがいろんな刺激を受けたものだと思う。私の友人の中にもこの本を小中学生の時に読んで、とうとう昆虫学者になったほどに一生が決まったのが何人もいる。そのような本を営々ときちんと翻訳していく仕事というのは、単に持続性だけの問題ではないだろう。これは次の世代にこの時代が果たすべき役割を自覚しているからこその仕事であり、それが奥本さんによって実ったということは、たんに個人のエネルギーだというよりも、時代が求めているものが奥本さんの中に凝縮して入り込んでいるからではないか。こうした仕事を評価することがこの賞の本来の意味ではないかと納得している。
スポーツはともすれば記録ばかりが見られてしまうが、私たちにとっては記憶、あるいは時代に刻印を推していく社会的文化的な意味もある。浅田さんは相当な記録も持っておられるが、何より彼女の姿が日本の多くの人たちを鼓舞したのだという感じがしている。たまたまアメリカに行った時に、向こうの友人たちがこのような人がいるのだと驚いていたので、私も自慢だったのだが、今日は目の前におられるので鼓動が抑えきれない気持ちでもいる(笑)。

私は映画少年だったので、岸さんの映画はよく見ていたのだが、岸さんは映画のお仕事の他に小説も書かれていて、その作品の中には新しい時代を予兆するような考え方も凝縮している感じがあった。映画女優というだけではなく、しかも海外にその存在をきちんと示されている。菊池寛賞の精神もそういったところにあるのではないかと思い、心から受賞を喜びたい。受賞者の皆さんに共通しているのは、時代の中に何かをきちんと刻まれたということだ。それがこの賞に対する最大の証しであろうと思う」と語った。

この後、各受賞者もそれぞれに受賞の喜びや思いを述べて、贈呈式は祝賀会へと移行した。
2017年12月8日 新聞掲載(第3218号)
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